MEET ME WHERE THEY PLAY THE BLUES
& PLAYING THE FIELDS

今回は映画『ベニー・グッドマン物語』でグッドマン役も演じたことのある、スティーヴ・アレンの歌を訳してみた。

1. Meet Me Where They Play The Blues
2. Playing The Field
3. スティーヴ・アレンについて


Meet Me Where They Play The Blues

恋に破れてハートはズタズタ、どう修復すればいいんだよ？
君が僕を泣かせたからさ、どうやって止めるのさ？
でも君が暗い気分になったのなら、
僕の所に駆け寄ってきなよ、
ブルースが演奏されている所で僕と会おうよ。

人は君が人目につかない場所で踊るのを見たって教えてくれたよ、
人は君が他の誰かの腕の中で愛し合っているのを見たって教えてくれたよ。
でも君が夢の中にいる気分なら、
それで僕に会いたいのなら、
ブルースが演奏されている所で僕と会おうよ。

涙に潤む目は、ここでは共通の姿で、
それに惨め同士が求めあう所だって、
そうやってみんな朝までだらだら過ごすのさ。
トランペットがすすり泣いてる間に、
君がここに来てくれたらと願うよ。

ワインをすすったり泡がはじけるのを見てるのは辛いもの、
僕らの夢がどうして道を外れて駄目になったんだろう？
でもハニー、君も学んだよね、
まだ恋の炎が消えていないことを。
ブルースが演奏されている所で僕と会おうよ。


※　ブルース風でノスタルジックな味わいを持つこの歌の出自について正確な所は不明だが、作詞はサミー・ギャロップ、作曲はスティーヴ・アレンで、紹介したのはジャック・ティーガーデンらしい。ティーガーデンは、1954年に彼のセクステットにプロデューサーのレナード・フェザーのピアノを加え Period レーベルに録音を残している。

ジャック・ティーガーデンは1928年から1960年代前半まで活躍したディキシー・スタイルのトロンボーン奏者であり、テキサス出身のティーガーデンは南部なまりを特徴とした白人ジャズ・ブルース歌手の開祖とも言える。

この歌はアンディ・ウィリアムスも録音しているが、彼のパーソナリティに合わず無難に歌っているだけという感じで、やはり枯れた味のあるティーガーデンの歌という気がする。最近ではマリア・マルダーが1999年に、メリッサ・カラードが2004年に録音しているが、いくぶん古きアメリカへの懐かしさが感じられる。


作詞： サミー・ギャロップ Sammy Gallop
作曲： スティーヴ・アレン Steve Allen (1954 頃か？)


歌・演奏：
●アンディ・ウィリアムス Andy Williams : Sings Steve Allen (Cadence)
●ジャック・ティーガーデン Jack Teagarden : Period's JazzDigest (Everest)
●マリア・マルダー Maria Muldaur : Meet Me Where They Play The Blues (Telarc)
●メリッサ・カラード Melissa Collard : Old Fashioned Love (Muzak)

Playing The Field

僕は色んな女の子と遊んでるのさ、
他の男たちも僕のように利口に立ち回るといいよ。

僕は周りを見て、クールに立ち回り、
誰にも騙されず、夢なんか見ないのさ。

僕は苦痛にも思わないさ、
口を滑らせても恋人たちの散歩道を
行ってみたいなんて言わないのさ。

ああ、僕の服は脱ぎっぱなしでも、
家に帰るのも夜遅くても、
新聞は散らかりっぱなしにも出来るのさ、
でも誰も気にしちゃいないよ。

時にはちょっと寂しく感じるさ、本当だけど、
まあいいじゃないか、
僕は座る人がいない椅子をきれいになんてしないのさ。

僕は色んな女の子と遊んでるのさ、
独身者として、なるべくいつまでも僕はいたいのさ。

僕の未来は封印されているけど、
チャンス到来を待ちながら、ねえ
僕は色んな女の子と遊んでるのさ。


※　独身生活の気楽さとちょっとした寂しさを歌った都会的な洒脱さを持ったジャズ風ポップ。

play the field は、手広くあさる、与えられたチャンスはすべて利用する、相手を限らず色々な異性と交際する、などの意味がある。

作者は1956年から続くトーク・ヴァラエティＴＶショーである、Tonight Show の初代ホストであるスティーヴ・アレン。
このショーにレギュラー・パフォーマーとして出演の機会を得たアンディ・ウィリアムスが、1959年にスティーヴ・アレンへの感謝をこめて作ったアルバム Sings Steve Allen (Cadence record) に収録されている。更に翌年の 1960年にはマーク・マーフィーがこの曲をアルバム・タイトルとして録音している。
またクラリネット奏者のバディ・デ・フランコとヴァイブ奏者のテリー・ギブスが Play Steve Allen (Contemporary, 1998) というアルバムでも取り上げている。


作詞・作曲： スティーヴ・アレン Steve Allen (1959 頃か？)


歌：
●アンディ・ウィリアムス Andy Williams : Sings Steve Allen (Cadence)
●マーク・マーフィー Mark Murphy : Playing The Field (Capitol)


スティーヴ・アレン（Steve Allen)
ＴＶパーソナリティ、俳優、作詞・作曲家、作家、ピアニスト、歌手など何でも屋と言える、スティーヴ・アレンは生涯に 8,000 とも 14,000 とも言われる曲を書いたという。また、彼の曲を集めたアルバムも Buddy DeFranco & Terry Gibbs, Andy Williams, Roseanna Vitro, Dorothy Collins, Carol Jolin, Frankie Randal など少なくない。

しかし今も残る曲は驚くほど少なく、1950年代にジャズ系歌手によく歌われた This Could Be the Start (Of Something Big)： 『夢の中に出てきた歌で運のいいことに目が覚めてから直ぐに思い出せたんだ』（ アレン談）、ナット・キング・コール、ハイーローズなどがヒットさせた Impossible 、はいずれも1956年の自身のNBCのテレビ・ショーのために書かれた歌。1956年の映画の主題曲に歌詞を付けマクガイア・シスターズがヒットさせた Picnic （作曲はジョージ・ダニング）、それにレイ・ブラウンのジャズ演奏曲に歌詞をつけた Gravy Waltz (1963) などが代表曲と言えるだろう。

彼は1999年発売の自身の歌詞集の序文で、『1920～1940年代のポピュラー黄金時代には、言葉の細工師たちはクリーシェ（陳腐な決まり文句）が存在しないオープンな時代に歌作りが出来たのに比べ、今日の作詞家は彼らの作ったクリーシェと対峙しなければならず困難に直面することが多い．．．』 と嘆く一方で、『僕の作った 8000 の歌のうち、 1000 以上は歌詞を作ったと思うけど、この歌詞集に収められた 100 曲はほんの一部でベスト集という訳ではないんだ』 と述べているが多少の自己顕示と誇張が感じられる。（その多作ぶりと風貌は、『浪速のモーツァルト』 を自称するキダ・タローを連想してしまう）

彼の数多の歌は、玉石混淆で多分玉と言えるものはわずかなのだろうが、それにしても彼はいともたやすく歌作りが出来たようで、フランキー･レーンと毎日 50 曲を一週間にわたり書き、それをハリウッドのミュージック・ストアのウィンドウ・ディスプレーに掲げられるか、という賭けをしてレーンから 1000 ドルを勝ち取ったというエピソードもある。変わった所ではメレディス・ダンブロッシオも録音したことのある Everybody Knows という歌がある。これは過去のヒット曲のワン・フレーズやタイトルなどを寄せ集めて一曲としたもので、アメリカ版チャンチャカチャンといったところ。

下の問答は、彼の歌詞集に引用されていた1956年のある雑誌の記事で、日本語だと分かりづらいが、黄金時代のポピュラーソングのクリーシェを引用した面白いものなので訳してみた。

ソング・ライター証言台に立つ

Q:　あなたはソングライターですね？
A:　作曲もしますよ。
Q:　あなたの答えをはっきりさせましょう。あなたが書くのは言葉ですかそれとも曲ですか？
A:　詩(lyrics)です。
Q:　あなたの書くのは主にどんな歌ですか？
A:　恋です。
Q:　どこでインスピレーションが得られますか？
A:　声からです。
Q:　どんな声ですか？
A:　体の中の声です。
Q:　その声は、あなたが恋に会ったときに伝えてくれますか？
A:　はい。
Q:　それはいつのことですか？
A:　六月のある晩です。
Q:　どこですか？
A:　月の下です。
Q:　恋だと直ぐに分かると思いますか？
A:　初めから分かります。
Q:　最初に恋に気付くのは何ですか？　あなたは、他の男のように、彼女の足首やくびれた腰を最初に見るのですか？
A:　いいえ、私が最初に気付くのは彼女の目からです。
Q:　彼女の目の色は何色ですか？
A:　ブルーです。
Q:　何故ですか？
A:　ユーやトゥルーと韻を踏めるからです。
Q:　恋人をどう呼ぶのですか？
A:　ベイビーと呼びます。
Q:　何故ですか？
A:　メイビーと韻を踏めるからです。
Q:　その娘はどんな感じの女性と考えていますか？
A:　ただ一人の娘です。
Q:　誰から見てですか？
A:　僕から見てです。
Q:　この関係はいくつかあるうちの一つだと思いますか？
A:　いいえ違います。
Q:　ではいつまで続くと思いますか？
A:　永遠にです。
Q:　もしその娘が別の男に興味を持ったらどうでしょう？
A:　つまり・・・他の誰かということですか？
Q:　その通りです。あなたはどう感じるでしょう？
A:　ブルーです。
Q:　その場合、あなたの個人的な感情的状態は何らかの天候状態に関係づけられますか？
A:　はい、確かに。例えば空を例にすると．．．
Q:　空はどうなりますか？
A:　曇ってグレーになります。
Q:　空が曇ってグレーになったらあなたはどうしますか？
A:　自分の部屋にこもります。
Q:　どんな部屋ですか？
A:　寂しい部屋です。
Q:　あなた方ソングライターはアパートや家に住まないのですか？
A:　いいえ。部屋だけです。
Q:　それでは、あなたは結婚したら住居を構えないのですか？
A:　二人で建てます。
Q:　何を建てるのですか？
A:　小さな巣です。
Q:　どの位の大きさの巣ですか？
A:　二人にとって丁度いい小さな巣です。
Q:　結婚式においては、だれが式を執り行いますか？
A:　ブラウン牧師(Parson Brown) です。
Q:　でもあなたがもしユダヤ教かカソリックだとしたら．．．
A:　かまわないのです。あらゆる結婚式はブラウン牧師が仕切るのです。
Q:　話の順序が逆になったようですね。あなたの恋に戻りましょう．．．
A:　我が真実の恋ですね。
Q:　発言に注意して質問だけに答えて下さい。その女性に会った時本当の恋と分かるのですか？
A:　彼女を見つけたら分かってしまうのです。
Q:　いつのことでしょう？
A:　いつかです。多分木曜日が福音の日でしょう。
Q:　どうして分かるのですか？
A:　とにかく分かるのです。感じるのです。
Q:　どこでですか？
A:　体の奥底からです？
Q:　いいでしょう。ここであなたが架空の女性に愛を伝えると仮定しましょう。あなたはどのように取り掛かりますか？
A:　彼女を腕に抱きます。
Q:　あなたが腕に抱くのは彼女の何をですか？
A:　彼女の魅力を腕に抱きます。
Q:　それでは彼女の返答はどうなるでしょう？
A:　彼女の返答は至福の唇です。
Q:　彼女は唇をどうするのですか？
A:　唇を僕のそれに強く押し付けるのです。
Q:　その幸福な状況での初期成果はどうなるのですか？
A:　灰色の空が青くなります。
Q:　あなたはどのような状態になりますか？
A:　また幸せが訪れます。
次の証人を。


参考：
● wikipedia
● Steve Allen's Songs - 100 Lyrics with Commentary （書籍）
 　

2010/08/07 訳
2013/03/01 レイアウト変更等

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