EMILY

エミリー、エミリー、エミリー
その音色は五月のつぶやき
あらゆる銀の鈴、珊瑚、回転木馬、
そして遊んでいる子供たちの笑い声

エミリー、エミリー、エミリーと言うと、
すると僕らは素晴らしい景色に溶け込む、
恋人二人だけ、はるか視覚の彼方に、
炎の中に映る姿を見る
僕の目には家族の像が浮かぶ
エミリー、エミリーも 。

すると僕らは素晴らしい景色に溶け込む、
恋人二人だけ、はるか視覚の彼方に、
炎の中に映る姿を見る
僕の目には家族の像が浮かぶ
エミリー、エミリーも。


※ジュリー・アンドリュース、ジェイムス・ガーナー主演の、第二次大戦のＤデイを主題とした、1964年のコメディ映画「卑怯者の勲章 (The Americanization of Emily) 」のために書かれた。

マンデルの提供したのは、サトルで短いメロディー。しかも主題の Emily に合う韻はないにも関わらず、マーサーはあえて Emily というタイトルで作詞する。彼はあたかも彼自身が撮影技師であるかのように、映像イメージを散りばめている。（ズーム、フェイドなど）

マーサーのラスト２行は、不完全韻である、family, dreamily という言葉を使用している。
　As my eyes visualize a family
　They see dreamily, Emily too.

しかしながら、ワーナー・ブラザーズはこれを気に入らず、出版された歌詞は
　As my eyes visualize a family
　They see Emily, Emily too.

となり、ほとんどの歌手が後者で歌っている。

※　Emily は女性名であるが、マーサー作詞の女性名タイトルの歌には次のようなものもある。
● Laura : 1944年の「ローラ殺人事件"Laura"」の主題曲にマーサーが歌詞をつけたもので、映画では使われていない。歌詞の内容は、映画の雰囲気を漂わせてはいるが、映画の内容とは直結していない。
● Tangerine : 1942年の映画「艦隊入港 The Fleet's In 」の挿入歌として使われた。作曲は監督のシャーツィンガー。彼から渡されたリードシートにマーサーが歌詞をつけた。マーサー自身は、「どうして Tangerine としたのか分からないんだ。でも南米風味のメロディーに合ったのかもしれないね」（タンジェリンは柑橘類の名前であり、南米原産ではないが、この歌ではタンジェリンという架空？ のアルゼンチンの女性名として歌がつくられている）

※　作曲のジョニー・マンデルは、1925 年生まれの、ポピュラー、ジャズ、映画音楽の作曲・編曲者。ジュリアード音楽院で学んだ後、1940年代は、トランペット、トロンボーン奏者としていくつかの楽団で演奏する。1950年代は、カウント・ベイシー楽団や、フランク・シナトラのアルバム Ring-a-Ding-Ding などの編曲を提供する。1959 年の映画「私は死にたくない I Want to Live) 」ではスコア提供、指揮者として注目される。1960、1970 年代は映画音楽に活躍の場を広げる。1981年にはクィンシー・ジョーンズのアルバム、1991年はナタリー・コールの Unforgettable、翌年はシャーリー・ホーンのアルバムの編曲でグラミー賞を受賞している。

彼が作曲した歌には、 Suicide Is Painless (映画 M*A*S*H）、 A Time For Love (映画 An American Dream), Shining Sea (映画 The Russians Are Coming, The Russians Are Coming), Close Enough For Love (映画 Agatha )、デイヴ・フリッシュバーグ作詞・歌唱の You Are There などがある。

しかし、最も有名なのは、ポール・フランシス・ウェブスター作詞のアカデミー主題歌賞、グラミー賞ベスト・ソングを受賞した、1965年の映画「いそしぎ (The Sandpiper)」のテーマ曲である、The Shadow of Your Smileだろう。

マーサーは映画のタイトルのイメージに合った歌詞を提供したのだが、プロデューサーはこれを気に入らず、何人かの作詞家に依頼したうち、最も映画タイトルとは無縁の内容の歌詞、 The Shadow of Your Smile を選ぶことになる。後にこれを知り、しかも同年のアカデミー主題歌賞 (Sweetheart Tree) を逃したマーサーは、悔しかったと見え、「 The Shadow of Your Smile というのは、口ひげのある女の恋人が歌った曲だろう」と罵ったという。


作詞： ジョニー・マーサー Johnny Mercer
作曲： ジョニー・マンデル Johnny Mandel
出典： 映画 The Americanization of Emily (1965) 主題歌

CD, LP
● アンディ・ウィリアムス Andy Williams : 16 Most Requested Songs (CBS)
● フランク・シナトラ Frank Sinatara : Softly, As I Leave You (reprise)
● ジョー・ムーニー The Happiness of Joe Mooney/The Greatness of Joe Mooney (Koch)
● ピンキー・ウィンターズ Pinky Winters : いそしぎ ジョニー・マンデル作品集
● スー・レイニー Sue Raney : シングス・ミュージック・オヴ・ジョニー・マンデル (Discovery)
● ザ・シンガーズ・アンリミテッド The Singers Unlimited : A Ccapella
● トニー・ベネット Fifty Years:The Artistry of Tony Bennett (Columbia)
● ビル・エヴァンス Bill Evans : ワルツ・フォー・デビー・ライヴ
● オスカー・ピーターソン Oscar Peterson : トラヴェリン・オン

2009/04/30 訳
2012/07/25 レイアウト変更等

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