歌の逸話3 ： Billy Rose の作詞術 - Me and My Shadow

ビリー・ローズ Billy Rose （興行主、舞台人、作詞家 (★1)）は、他の作詞家にタイトルまたは一部言葉を変えさせて、歌詞が出来るとシート・ミュージックに名を加えロイヤリティーを要求することで知られていた。よく言えば彼は音楽界のアブのようなものだが、作曲家のハリー・ウォーレンはこう語っている。

ビリーは無慈悲な男だけど偉大な飼育係り (feeder) でもあるんだ。彼は若手の横に座り言うのは『さあ頑張ろうぜ、もっとうまく出来るから』って。彼は次のラインを要求し、時に彼自身で一節を思いつくこともあるんだ。彼はフレーズを無理やり入れ込むこともあるけど、彼は本当の作詞者に刺激を与えたんだ。ともかく歌が失敗作だったとしても、彼は他の作詞家と一緒でなければ簡単には作品を作れなかったのさ （★２）

数多い彼の歌の中で、ローズの一番のお気に入りは Me and My Shadow (1927) であった。実際は、誰か知らない男がタイトルを持ってローズに近寄ってきたので、ローズはこれを 15 ドルで買ったという。ローズは粗い歌詞を書き、それからデイヴ・ドライヤー Dave Dreyer に渡した、その理由はこの若い作曲家が大物歌手のアル・ジョルスンの知り合いだったからに他ならない。一晩かけてドライヤーは曲を書き歌詞を書き直した。ローズはこれを見て、一語だけ書き直してページのトップに自分の名前を加えたという。この歌はジョルスンのショーのために歌われることが決まっていたためだ。（★３）



★1: 興行主としてのローズは主にレヴューを作ったが、舞台劇 The Great Magoo (1932, Paper Moon が有名）, サーカスとレヴューを組み合わせた Jumbo (1935, My Romance, Little Girl Blue が有名) などもある。
またソング・ライターとして彼の名が加わったスタンダードには、
Back in Your Own Back Yard, It Happened in Montery, It's Only a Paper Moon, More Than You Know, Without a Song などがある。

★2: この逸話を聞くと、アーヴィング・ミルズが初期のエリントン・ナンバーの作者に名を連ねたことを思い出す。ミルズは楽譜出版者またはマネージャーとして... (以下 Sophisticated Lady 参照）

★3: この歌の作者は、作詞：ビリー・ローズ、作曲：デイヴ・ドライヤー＆アル・ジョルスンとなっている。アル・ジョルスンが作者クレジットに加わっているのは、自分のショーで歌う代りに作者にも名を連ねるという交換条件があったためだろう。

★4: YouTube から珍しいシーンがあったので紹介すると、次にリンクしたのは
　　映画 Feudin', Fussin', and a Fightin (1948) での "私と影"
この５年後に作られる "雨に唄えば" でのドナルド・オコーナーの Make 'em Laugh の原点がここに見られる。

参考資料：　America's Songs

2013/08/15 作成

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