EVERYTHING BUT YOU

あんたはテキサス産の馬を残して私から去った。
分割支払いの残った家も、
X印(キス)がいっぱいの手紙もある、 ★1
ないのはあんただけ!

あんたはボストンの豆を残して私から去った。 ★2
二人乗りの自転車も、 ★3
没頭させられる思い出もある、
ないのはあんただけ!

毎日がとても楽しくとても向こう見ずだった。
私は息も止まるような時間を愛したのに、
どうやって気付けたと言うの、二人で楽しんだ
キスには将来がなかったなんて...

あなたは共に過ごした部屋をのこして私から去った。
ペルーのコーヒーポットも、
いちゃつくときのナイフとフォークもある、 ★4
ないのはあんただけ!

※ エリントン特有の粘り気のあるミディアム・スィング。ナンセンスな言葉の列記で歌うは、 男に逃げられた女の、捨鉢でユーモアのある嘆き節。

1945年にエリントン楽団の女性歌手 ショーヤ・シェリル Joya Sherrill (彼女は A Train の作詞者でもある)が楽団をバックに歌ったものが最初だが、元は1928年5月に、デューク・エリントン・コットン・クラブ楽団が録音した Got Everything But You の演奏がもとになっている。
(参考:デューク・エリントンの ディスコグラフィー

作詞はエリントンの親密な友人であり I Ain't Noghting But the Blues, I'm Beginning to See the Light, It Shouldn't Happen to a Dream, Tulip or Turnip など代表的なエリントン・ナンバーに歌詞をつけたドン・ジョージ。

作曲はエリントンとハリー・ジェイムズの連名となっているが、 I'm Beginning to See the Light 同様、ハリー・ジェイムズは曲の知名度を上げるために名前を借りただけで、曲作りには一切かかわっていないと思える。(実際、ハリー・ジェイムズ楽団でキティ・カレンが歌った See the Light は大ヒットした。なお、キティ・カレン&ハリー・ジェイムズの録音に Take Everything But You という録音は存在するが全く別物の歌)

jazzstandards.com の811位 につけており、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン(共にエリントン作品集)、ジェリ・サザーン、ミリー・ヴァーノン、マーリーン・ヴァープランクなどが歌っている。

★1: ラヴ・レターの文末につける X 印のことで、キスを意味している。
★2: ボストンと豆はつきもので、beantown と言えばボストンを指す。
★3: 19世紀末のヒット曲で、今ではアメリカ童謡となっている Daisy Bell 歌詞の引用。
★4: この行の歌詞は "A knife and fork to spoon with" で spoon with はいちゃつくといった意味。ナイフ、フォーク、スプーンを列記しただけの他愛もない歌詞。



作詞: ドン・ジョージ Don George (1945) (作品リスト / dbopm リスト )
作曲: デューク・エリントン、ハリー・ジェイムズ Duke Ellington, Harry James
(デューク・エリントン:作品リスト / dbopm リスト )

YouTube
■ ショーヤ・シェリル
■ Got Everything But You : エリントン楽団のオリジナル録音(1928)
■ エラ・フィッツジェラルド
■ サラ・ヴォーン


2019/07/25 訳


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