|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
ALL THE THINGS YOU ARE
(stage version)
Complete Lyrics of Oscar Hammersetein II には、名曲 All The Things You Are の歌詞が、一般に聞かれるシート・ミュージック版と、舞台版 (Very Warm For May) の二つ載せられている。
※ 状況が分かりにくいので補足すると、Very Warm For May は、夏興行（金持ちの納屋を借りての夏季地方興行）を題材にしたバック・ステージ・ミュージカルである。
ここでは、まず聞かれることのない舞台版の歌詞を訳してみる。
訳の前に状況説明をすると、舞台でこの歌を紹介したのは以下の４人であり、
● ハイラム・シャーマン (Hiram Sherman)： オグドン (Ogdon) 役、劇中劇ではアダム・スタンデッシュ (Adam Standish) を演ずる。
● フランシス・マーサー (Frances Mercer)： リズ (Liz) 役、劇中劇ではへスター (Hester) を演ずる。
● ホレス・ショウ (Horace Shaw)： キャロル (Carol) 役、劇中劇ではへスターの心の声。
● ラルフ・スチュアート (Ralph Stuart)： チャールス (Charles) 役、劇中劇ではアダムの心の声。
劇中劇を演出するオグドンはこの歌を劇ではこう説明している。
オグドン「この場面では、二人の恋人ともにとても内気過ぎて本当の気持ちを伝えられないんだ。だからこのデュエットは二人の心の声が歌うんだ．．．恋している人間は恋人の顔を見て歌わないだろう？ただ顔を見つめ合い黙っているだけだろう？でも誰かが歌う必要があるから．．．この男性に僕の心の声を、この女性には娘の心の声を歌ってもらうんだ。黙って見つめ合う恋人同士の心の想いを二人に歌ってもらうんだ。」
その上で彼らが歌った歌詞が以下の通り、
［ヴァース］
へスター： 彼の前では心休まったことなんて一度もないわ、
彼に会えて嬉しいと言えたことなんて一度もないの、
ただ黙ってしまい、内気になるだけ。
アダム ： 彼女といると、口説こうと出来たことなんてないんだ、
彼女の前では、小心で、恥かしがりやで、無口な男、
僕は、口べたなはにかみ屋の少年さ。
へスター： ああ、私ったら。
私の心が声を出すことができたなら。
アダム ： ああ、僕というやつは。
僕の心が声を出すことができたなら。
二人 ： 彼（彼女）が、何か新しいときめきを聞けたならいいのに。
意志の耳が彼（彼女）に授けられればいいのに。
ああ、ああ、ああ・・・
［リフレイン］
へスターの心：
あなたは約束された春のくちづけ
それは寂しい冬が長いと感じさせてしまうほど。
あなたは、息を止め静まり返った夕方
それは愛らしい歌が消え入る時の震え。
あなたは天使の輝き
それは星を明るくする、
私の知っている最も愛おしいものは
あなたそのもの。
いつか私は喜びに満ちた腕で
あなたを抱きしめるでしょう。
そしていつか私はその
至福の時を知るでしょう。
いつかあなたの全てが
すべてが私のものになる時に。
アダムの心：（カウンター・メロディ）
ねえ、君は僕のなによりも大切な人。
春の時のすべて。
そう、君は柔らかな響き
はるか見知らぬ所からの愛らしい歌の響き。
君は星の夜を明るくする、
君はまさに君そのもの。
僕は僕の温かい腕で
君を強く抱きしめる日を迎えたい。
君が欲しい。
いつになるのだろう
君が僕のすべてになる時は。
登場人物の一人であるオグドン・クィーラーは、前衛演劇研究会の主催者。彼はスポフォード家に彼の仲間とともに泊まり、芸術気どりの劇を企画する。そこにブロードウェーから来た、演出家・振り付け・役者・歌手であるジョニー・グラハムが現れ、娯楽性の高い演出に変えなんとか劇を成功させるといったプロットであり、恋愛、誘拐などがこれに絡む。
（しかしオリジナルの脚本にはなかったメイ・グラハムをトライアウト巡業中に追加する等の、プロットの大幅変更を強要されたのがこのミュージカル失敗の原因だと、作曲のジェローム・カーンはプロデューサーのマックス・ゴードンを非難したという）
そして、 All The Things You Are は、夏興行の劇中劇として演じようとするシーンで歌われるもの、つまり二重構造のものと想像されるが、更に劇中劇の役とは別に、心の声が本コーラスを歌うというひねった三重構造のシーンで使われるようだ。（つまりへスター、アダムとは劇中劇の登場人物名）
ヴァースは、一般に聞かれるシート・ミュージック版 (Time and again...) とメロディーは同じだが、まったく異なる歌詞であり、また長さも１６小節長いという。
リフレインでの「へスターの声」が歌うのは、シート版と同じであり一般に聞かれる歌である。
リフレインでのカウンター・メロディーである「アダムの声」が歌うのは、舞台版のみの歌詞であり、一般に聞かれることはない。
また、この歌は多くのソングライターのフェヴァリット曲でもあるとともに、多くのミュージシャンによって録音された、芸術性と大衆性の両者を兼ね備えた歌である。ディスコグラファーであるジョー・ホイットバーンが調査した1890年〜1954年間に最も多く録音された歌のベスト９にランクされている。
ジャズミュージシャンにも好まれたこの歌は、 JazzStandards.com のランキング1000では、 Body and Soul に続き№２にランク付けされている。
Very Warm For May の映画化権を買い取ったＭＧＭは、いくらかの要素のみを残して、 Broadway Rhythm (1944)として映画化をした。曲の大半は新たに作られたが、 All The Things You Are はGinny Simms によって歌われた。しかしこの映画は退屈な駄作であり、歌が生かされることはなかったようである。
映画：
● Broadway Rhythm (1944, Ginny Simms)
● 雲果てるまで Till the Clouds Roll By (1946, Tony Martin)
● Because You're Mine (1952, Mario Lanza)
● Fallen Angels (1998, Chet Baker)
● ヘンダーソン夫人の贈り物 Mrs. Henderson Presents(2005)
作詞： オスカー・ハマースタイン二世 Oscar Hammerstein II
2009/05/10 訳
作曲： ジェローム・カーン Jerome Kern
出典： ブロードウェイミュージカル Very Warm for May (1939) より
2012/11/20 エッセイ → 訳詩 に移行
ページトップへ
上位メニューへ