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Ｇ＆Ｓ訳一覧 |
ギルバート＆サリヴァンのコミックオペラ「ロンドン塔の近衛兵」(1888) 台本の訳（G&S 訳 9本目）
The Yeoman of the Guard
or
The Merryman and His Maid - Act II
ロンドン塔の近衛兵
あるいは
道化師と乙女 （第二幕）
台本： Ｗ．Ｓ．ギルバート W.S. Gilbert
作曲： アーサー・サリヴァン Arthur Sallivan
初演： ロンドン、サヴォイ劇場、1888/10/03
※： 登場人物、概要などは第一幕を参照。
第二幕 あらすじ
フェアファクス逃亡の二日後。道化師ジャック・ポイントは落ち込んでいる。フェアファクスが逃亡した今、エルシーはまだ人妻であり、彼女と結婚することはできない。そこで彼はある計画を思いつく。道化師の仕事を無料で教え、更に高位の道化師に推薦することを交換条件に、無職となり道化師志望のウィルフレッドを説得し、逃亡したフェアファクスを殺したことにするという道化師の計画に協力させる。
メリル家で療養していたエルシーは体調も戻りメリル家を出ようという時、彼女を看病していたカラザーズ婦人の姪のケイトが、朦朧状態のエルシーのうわごとから彼女はフェアファクスと結婚していることが知られる。レナードに扮したフェアファクスは、彼女を口説いて貞節を試す決意をするが、エルシーは自分が人妻であることを告白し、フェアファクスの愛には応えられないと、心ならずも彼の求愛をはねつける。
突然の銃声が皆を騒然とさせる。興奮した群衆の前にウィルフレッドが登場し、逃げようとしていたフェアファックス大佐と死闘を繰り広げたと述べる。フェアファクスは自分から逃れ、川に飛び込んだ。しかし自分はテムズ川を泳ぐフェアファックスを火縄銃で射殺したと主張し道化師はこれを目撃したと証言する。
フェアファクスが死んだとのしらせに、道化師ポイントは今や未亡人となったエルシーに求愛しようとするが、偽物のレナード・メリルであるフェアファクスがその愛に割り込みエルシーの愛を勝ち取る。結局、道化師ポイントとフェアファクスの正体を知っているフィービーは失恋する。彼女が泣いている場に現れたウィルフレッドは彼女がフェアファクスを匿ったという秘密を知りフィービーはウィルフレッド沈黙の代償としてしぶしぶ彼との結婚を承諾する。
本物のレナードが現れフェアファックスへの恩赦が届くと同時に、フェアファックスが花嫁を迎えに戻ってくるという知らせが入るが、大佐の陰謀はカラザーズ婦人にも漏れ、計略を立てたメリル軍曹に半ば脅迫まがいに結婚を迫りメリル軍曹はしぶしぶ同意する。
フィナーレで、哀れなエルシーは気が動転してしまう。フェアファクスに従わなければならないが、彼女の心は別のところにある。フェアファクスが花婿姿でやって来て二人の婚姻の正当性を主張する。エルシーは残酷な運命を嘆きながら下を向いているが顔を上げた時、自分が愛している "レナード"が、この憎きフェアファックスに他ならないと分かり歓喜する。最後は道化師ポイントだけが仲間を失ったまま残されカップルの足元で倒れ、ハッピー・エンドと悲劇が混じり合った幕となる。
歌曲リスト
15. Night has spread her pall once more
16. Oh! a private buffoon is a light-hearted loon
17. Hereupon we're both agreed
18. Free from his fetters grim
19. Strange adventure
20. Hark! What was that, sir?
21. Like a ghost his vigil keeping
22. A man who would woo a fair maid
23. When a wooer goes a-wooing
24. Rapture, rapture
25. Finale Act II (Ensemble)
a. Comes the pretty young bride
b. Oh, day of terror!
c. Leonard, my loved one, come to me
d. I have a song to sing, O!
第二幕
場面： 同じ場所、月光。 二日経過。 女性たちと近衛兵が見える。
女性たちのコーラス Night has spread her pall once more
夜はまたもそのとばりを下ろし、いまだにあの囚人は自由の状態：
開くは地下牢の扉、
今は価値なき牢の鍵！
彼がくびきを振り落し ―
いかにか、命ある人には言えぬ！
恥を知れ礼儀知らずの刑務官 ―
恥を知れ眠たげな歩哨よ！
（カラザーズ婦人と姪のケイト登場）
独唱 ― カラザーズ婦人
そなたらは見張人か？誰を見張っているのか？
かんぬき、鉄格子、鍵、
足枷、それに縄、
足錠と鎖、
地下牢に石垣、
全て無駄に ―
囚人は飛び去った！
皆がいるのに、彼は自由 ― 彼は自由！
誰を見張っているのか？ そなたら素晴らしき見張り人たち！
女性たち そなたら素晴らしき見張り人たち、 （繰り返し）
近衛兵たち 上も下も、それに中も外も、
ここもそこも、そして周り中；
あらゆる部屋も、あらゆる家も、
あらゆる鼠穴となる隙間も、
あらゆる監獄の裂け目も、
ゴキブリが這う所すべて、
あらゆる出口、あらゆる排水、
捜索した我ら、しかしすべて無駄に。
アンサンブル 見張り人なるそなたら/我ら
誰を見張っているのかそなたら/我らは？ （繰り返し）
（全員退場、ジャック・ポイント元気ない様子、大判の本を読んでいる）
（ダイアローグ）ポイント： （音読する）「陽気な道化 ヒュー・アンブローズ著、第7863： 貧しい茶化し屋と金満代議士。 ある貧しい茶化し屋、空腹でいたところ、大食らい代議士に会った。『おや、道化殿、』と言いしは代議士、『いずこへ？』 『ほんまに』答えた飢えたる奴(やっこ)、『この二日間なんも口にしてないよってに、萎れそうだす、あっちゅーまに！』 ★１ 代議士殿抱腹しソーセージを与えた。」 なんだよ！ この代議士は我が新しき雇用主なる副長官より簡単に笑いやがる。この代議士の下で働けたらよいのに。 おい！ 哀れな失恋をしてただ憂鬱に口をつぐんでいる、ふられ者ジャック・ポイントよ、原点の緩い笑いのヒュー・アンブロ―スに向き直る必要がありそうだ。
（ウィルフレッド登場、同様に元気ない様子）
ウィルフレッド： （ため息をつきながら） ああ、ポイント先生！ポイント： （態度を変える） よっ！ 友なる看守殿！ かつては看守 ― もう看守しないであろう看守殿！ 看守を軽うじた看守かな、あるいは監禁されしかも、仮に彼が看守を敢行し、かのごとくに看守役を解任されたは、まったくの片手間の看守ゆえに、あるいは軽はずみに看守したからか ― かとは言え彼には軽口では済まず、看守らしからぬ看守にて、それで彼(か)の看守職を解職の危機にさらしたかな。★２ さあ元気を、微笑み、大笑いし、ウィンクし、瞬きを、詰問道具はもう詰問せず ― 拷問台は拷問せず ― やっとこは行くとこなし ― さあ、元気を、陽気でいよう、俺みたいに！ ― （悲し気に小声で） ― 俺みたいに！
ウィルフレッド： ああ、あんたには笑いが合うよ。あんたは良い地位を得た、それが陽気でいられる原因なのだな。
ポイント： （苦々しく）原因？ 我々が全ての原因を持っているとでも？ 世界はユーモアが詰まった大樽で、そこに誰もが錐で穴を空けられるとでも？ いや、僕は雇われ道化師、何でもかんでも身に備わった馬鹿さ加減があるとでも？ 哀れで、沈んだ、心に傷を持つ男は、陽気でいなきゃだめなんだ、そうでなければ鞭に打たれるしか； 飢えるまで喜ばせる必要が； 君におちゃらける必要が、軽口する必要が、皮肉る必要が、洒落る必要が、痛める必要が、謎かける必要が、毎時間、毎日、毎年、彼が衰え、枯れ、飢え、やつれ、死ぬまで！ そうよ、もし笑う材料がなかったら、自分自身を傷つくまで笑い飛ばすのさ！
ウィルフレッド： これまで、俺はよく道化師は髪の毛まで合っている天職だと思ってたよ！
ポイント： 君が？ 君に合うとでも、海賊の髑髏旗のような君が？
ウィルフレッド： そうでさ、俺にはすごい頓智があるんだ ― 軽く、空気のような、独房や拷問部屋での逸話をピリッと利かせた。おお、とても繊細な頓智が！ 俺は何人もの囚人に試してきて、何人かは微笑んだものさ。今は囚人を簡単に微笑ませることは出来ないが。良い道化師になるのは難しいとは思えないんだ、あんたを見ていると。
ポイント： 難しいかと？ 簡単なものなんてないさ。留意せよ、君にそれを証明しよう！
★１： ここは『いずこへ？』(whither away?)と『萎れそう』(wither away)の洒落だろう。
★２： ジャック・ポイントは “J” のつく言葉をならべて軽口を言っている。訳の方は「か」の頭韻で代用した。
歌唱 ― ポイント Oh! a private buffoon is a light-hearted loon
おお！ 個人営業のおどけものは軽い心の狂人もし君が人気の噂話を聞きたきゃ；
朝から夜まで彼はとても楽し気に輝く、
そして彼の頓智と善きユーモアがはじける！
彼はとても風変わりで洗練、散文でも韻詩でも；
けれどたとえ人々が彼のやりすぎを許していたとしても、
道化一家には一つか二つの決まりがあるもの
観察しなければ、もし彼らが彼らの知的職業を愛しているならば、
そこには一つか二つの規則が、
半ダースの、もしかして、
どの道化一家にも、
地位の差があるとても、
観察しなければ、もし彼らが彼らの知的職業を愛しているならば、
もし君が道化師として成功したいなら、君に必要なのは
それぞれの人の耳の反応を考慮すること：
Ｂには問題なくともＣには大いに中傷となることも
（Ｃは大いに特殊ゆえ）；
それにＤにはだるく、Ｅは分厚い(にぶい)頭骨(あたま)の持ち主
ひしゃくのごとく空っぽの頭脳であることも
一方ＦはＦのシャープで、あらさがししぃの文句たらたら、 ★１
それが彼のゆりかごの時から知った最高の冗談なのに！
彼らが君のユーモアを愚弄したときでも、
君は我をわすれてはいけない；
そう君を狂わせもする
人がこう言ったとき、「おお！
私はゆりかごの時からその古い冗談を知っているよ！」
もし君のご主人が不機嫌であれば、早朝に起きたときから
（それに朝は癇癪気味のときは）、
折り悪い冗談は十分な激高を起こす
彼が君に与えるは、瞬く間に、一カ月の訓戒。
それで君が控えたら、彼は君の前に再び現れる、
何故なら彼は金銭に値するものが得たいから：
彼はその場ですぐに頼むは、横柄な目つきで、
「知っているか君の可笑しさに金が支払われていることを？」
それは課題が加わること
道化師の課題が、
君の支配者が頼んだときは、
怒り顔をしながら。
知っているか君は可笑しさに金が支払われていることを？
司教がお出ましのおりは、たぶん、あるいは勿体ぶった神学博士が
おお、彼を怒らせないよう気をつけよ！
彼の髪の毛を引っ張らないほうがよい ― 椅子に画びょうを置いても；
彼にはいたずらが理解できないから。
もし君のおちゃらけた皮肉が権威者の特徴を捉えていたら、
きみは彼ら賢人ぶりから穏やかな微笑みを返されるだろう；
でも彼らは、偶々に、フランス輸入のことを言ったら、★２
君の収入から半クラウンは止められるはず！
それが一般の規則、
たとえ君の熱情が消えてしまっても、
もし道化仲間が
きわめてフレンチ風なきわどいことを言ったら
君の給金から半クラウンは止められるはず！
たとえ君の頭が怒りにまかせた攻撃でひび割れても、
それに君が歯痛で失神しそうな感覚であっても、
ふさぎ込んで寝込んではならぬ ― 彼らはそれで君に罰金は科さないから
君が適切に風変わりで楽しい限りは！
たとえ君の妻が兵士とその日駆け落ちしても、
それにわずかながらの金銭を持ち逃げしても；
祝福しなさい、彼らは気にしないから ― 彼らは非常に優しい ―
彼らは君を非難はしない ― 君が可笑しくある限りは！
気持ちよく感じるものだ
君のパートナーが軽快な動きならば、
たとえ君が多くの不幸をこうむったとしても、
誰もちっとも気にはしない ―
彼らは君を非難はしない ― 君が可笑しくある限りは！
★１： 道化師のあるべく姿を示したパター・ソング。途中に出てくる 「Fのシャープ」 は用語解説によると「音楽用語というより”F” は蚤fleaのスラングでsharpは蚤が刺すことを意味している」それに続く「あらさがししぃの文句たらたら」は些細な欠点を指摘したがる演芸評論家をさすらしい。
★２： フランス輸入とは「きわどいこと」つまり下ネタのことらしい。
（ダイアローグ）
ポイント： それで君は道化になりたいと？
ウィルフレッド： そうさ！
ポイント： さて、聞くんだ！ わが愛しの、エルシー・メイナード、秘密裏にこのフェアファファクスと逃亡する30分前に結婚したのだ。
ウィルフレッド： 彼女はうまくやりやがったな。
ポイント： 彼女はそんな気はなかったんだ、だから心穏やかに熟考してほしい。いま彼が生きている間の彼女は僕にはそして僕は彼女には死んでいるも同じ、それで、我が軽口も冗談にもかかわらず、僕は英国で最も悲しく気の毒な奴(やっこ)さ。
ウィルフレッド： あんたは本当に沈んだ奴(やっこ)さんだよ。
ポイント： さて君が約束する気なら、つまりかのフェアファクスが川を泳いで渡ろうとしている時に彼を撃ったら ― 必要なのは暗い夜中に火縄銃を発射する必要があるが ― それで彼が沈んでもう浮き上がらなかったら、僕は君を道化師の大司教にさせてあげよう、それも二日間で！ さあ、答えはどうか？
ウィルフレッド： 嘘をつけと？
ポイント： 本気さ。しかし君の嘘は状況がそろっている必要がある、僕は目と耳と口による証言での支持をしよう。
ウィルフレッド： それであんたは俺に道化師としての資格を与えると？
ポイント： 道化の中の道化として。僕は君にお教えしよう我が創作歌、我が創りし謎々、我が高貴なる詭弁の全て、いや、それ以上、君に僕が至った源泉を明らかに。さて、どう答える？
ウィルフレッド： なんと、一つの嘘だけでそうなるなら、十分安いってもんだ、だからイエスと答えよう、安物買いだ！
デュエット ― ポイントとウィルフレッド Hereupon we're both agreed
二人 ここに両者は合意に至った、我ら二人ですべて
合意に至った
我ら確実にするのは厳格なる行為によって
防ぐために
あらゆる馬鹿な間違いを。
ポイント 君がエルシーに告げる
つくりばなし
残忍で血なまぐさい；
ウィルフレッド フェアファクスがどのように死んだか、その他もろもろ
俺は宣言する役
あんたは誓う役。
ポイント 僕は誓う役！
ウィルフレッド 俺は宣言する役！
ポイント 僕は誓う役！
ウィルフレッド 俺は宣言する役！
二人 語ろう眉唾もののほら話を
微に入り細に入る確信的な
とてつもないほら話
天よ我らを護りたまえ！
何と言う眉唾もののほら話！
二人 我が役割の見返りに
あんたは/僕は
請け負うのさ、
俺に/君に教授するは技巧
（素晴らしき技巧、
驚異は高揚す）
ポイント 道化として、自由なおちゃらけ。
誇るべき地位との ―
高き野望！
ウィルフレッド そして活気のある者に俺はなろう、
しゃべり続けのひょうきん者
決してゆるまず！
ポイント しゃべり続けのひょうきん者！
ウィルフレッド 決してゆるまず！
ポイント しゃべり続けのひょうきん者！
ウィルフレッド 決してゆるまず！
二人 語ろう眉唾もののほら話 （繰り返し）
（二人退場、フェアファクス登場）
（ダイアローグ）フェアファクス： 二日が過ぎ、哀れなフェアファクスの知らせはない。間抜けども！ みなが探すのは彼の地下牢の12ヤード以内を除いたすべて。だから私は自由なのだ、しかし災いもあり、私が軽率にも急いだ婚姻の束縛の相手 ― 誰かは神のみぞ知る！ 覚えている限りは、彼女は若かったに違いない； しかしながら彼女の顔はネッカチーフで隠されており、私にはどれかは疑わしい、その時の誓いにより、私は彼女に多分の言及を与えねば。自由と？ フン！ 塔での婚姻はただ絹の一糸との夫婦の束縛に例えられよう、そこで私は、愚かなことに、私自身の両手に置いたこと。その片手からは私は一切の躊躇なく断(た)った ― いかにしてもう一方を断つかだ！
バラッド ― フェアファクス Free from his fetters grim
彼の厳格な束縛から自由になり ―去ることの自由；
人生と四肢いずれもの自由 ―
しかし心は自由にならず！
見知らぬ花嫁と結ばれること
善き時も病める時も；
ああ、そのように結ばれし者は
囚人のままではないとでも？
自由、それでも束縛を続けるは
彼の最後の時間まで、
どの鍛冶屋でさえ溶接できぬ足枷、
さびが食い破ることも叶わぬ！
たとえ君主の手により
彼を解放させたとしても、
すべての捕らわれの帯の中で
悲惨極まりなき彼かな！
（メリル登場）
（ダイアローグ）フェアファクス： やあ、メリル軍曹、あなたがしっかり世話している、エルシー・メイナードはいかがですか？
メリル： 十分元気に、サー。 彼女はすこぶる元気に戻り、そして今晩我らの元を発つ予定です。
フェアファクス： 感謝するのは優しく看病したカラザーズ婦人ですな？
メリル： 全く、悪魔が老魔女にとりついたよう！ ★１ ああ、悲しい罠をあなたは私にかけましたな、私の所に失神した女性をあてがうとは。それで老婦人が私の家を宿泊所に変える言い訳にしたようなもの、この二年間私は彼女をペストのように遠ざけていたのに。新たな日になったら彼女は私と結婚しようとするでしょう！ （カラザーズ婦人と姪のケイト登場）おやおや、彼女がまた来た！ 私は退散するところだった。（行きかける）
婦人： 駄目よ、メリル軍曹、行かないで。私にはあなたに言うべき重要なある話があります。
メリル： （小声で）やはり来たか。
フェアファクス： （笑いながら）思うに私はここにいない方がいいようだ。（退出しかける）
婦人： いいえ、レナード様、私が父君に言ったのは息子が聞かないようにではありません。
フェアファクス： （小声で）その通り。私は家族の一人だ； 忘れてしまっていた！
婦人： エルシー・メイナードに関してのことです。 可愛い少女ですね、レナード様。
フェアファクス： そうです、桃の花のように綺麗な人だ ― それで？
婦人： 彼女はあなたを好んでいるようです、間違いなく。
フェアファクス： 心を込めて。彼女は上品さを持つ小さな乙女、まるで夏至の日の行進。
婦人： それでは今のうちに注意しておきます、あなたの心を彼女に捧げてはいけません。おお、私は自分の心を捧げたい人が私にはその気がないのを知っています。
メリル： （小声で）そうか彼女は知っているのだな。（声をあげ）それで何故息子が彼女に留意しなければならないのですか？ 彼女は善き少女、カラザーズ婦人？
婦人： 私が知っている十分な理由が。でも彼女は少女ではないのです。彼女は人妻です。
メリル： 人妻と！ フン、老女め ― 彼女はジャック・ポイントと婚約しておる、副長官の新たな宮廷道化師と。
婦人： フンは返しましょう、お爺さん！ 私の姪のケイトが今日彼女の傍らに腰かけていたとき、このエルシーは眠っていて、眠りにつれて彼女は悶えたりうなったりして、こちら側あちら側にと寝返りを打ち ― そして「なんで私は見ず知らずの人と結婚したのかしら？」 と彼女の言葉 ― それから、「100クラウンで！」と彼女の言葉、 ― それから「彼は一時間以内に死ぬことが確かだったのかしら？」と彼女の言葉 ― それから、「私は彼を愛したことはない、それでも私は彼の妻のまま、」と、彼女の言葉！ その通りでしょケイト？
ケイト： そうです叔母様、まことです。
フェアファクス： 確かなのかそなたの言葉はすべて？
ケイト： その通りです、サー、何故なれば書字板に全部書き込んだのですから。
婦人： さて私の言葉に注意して； 彼女が言ったのはフェアファクスのこと、そして彼が彼女の夫、嘘だったら針千本を呑み込みましょう。
メリル： （小声で）事実ですか、サー？
フェアファクス： （小声でメリルに）事実かと？ なんと、この少女はうわごとを言っていただけです。（声を張り上げ）なぜ彼女はたった一時間しか生きていられない男と結婚したのか？
婦人： 結婚？ 死にゆく老嬢でいるより、一分間でも結婚したいという人間はいるもの。
メリル： （小声で）しかり、私もその一員を知っている！
★１： メリル軍曹の言葉の端々に、オールドミスで自分に気のあるカラザーズ婦人への嫌悪が滲みでているが、後に足元をすくわれることになる。
カルテット ― ケイト、カラザーズ婦人、フェアファクス、メリル軍曹
Strange adventure
全員 奇妙な出来事！ 乙女が結婚したは彼女が会ったこともない花婿 ―
一度も、一度も、一度も会ったことがない！
花嫁はまさに打ち首になろうと、
一時間のうちに、タワー・グリーンで！
タワーの、タワーの、タワーの緑地で！
花婿は陰欝な地下牢を寝床にした、
花婿は死人も同然、あるいは死にかけていた、
可愛い乙女をため息させる ―
十七歳の可愛い乙女！
十と、十と、十七歳の！
奇妙な出来事を我らは輪唱する：
しとやかな乙女と勇敢な花婿 ―
勇敢、勇敢、勇敢な花婿！ ―
葬送の鐘が鳴っている間にも、
鳴るは、鳴るは、ビン ァ ブーン！
ビン ァ、ビン ァ、ビン ァ ブーン！
しとやかな乙女は待ち望まない；
十六年という歳月を過ごしたとはいえ、
彼女は結婚しなければ、彼女は結婚しなければ、
祭壇となるは墓石と言えど ―
タワーの、タワーの、タワーの緑地で！
（カラザーズ婦人、メリル軍曹、ケイト退場）
（ダイアローグ）フェアファクス： そうか我が神秘の花嫁はこの魅力あるエルシー以外ありえぬ！ 我が手により運命の女神が持つ福袋に突進したは悪い事ではなかった！ 目をあけていたらもっと酷い成り行きだっただろう！ でも彼女が来る。さて節操を試そうか。自分の妻に言い寄る機会がある夫など誰にでもあるわけなかろう！
（エルシー登場）
フェアファクス： エルシー夫人！エルシー： レナード様！
フェアファクス： それで今夜わが家から出ていくと？
エルシー： そうです、レナード様。私は優しく看病していただきました、それで私は行くことがとてもいやでしかたありません。
フェアファクス： それでかのフェアファクス。あなたは彼が逃げたときは喜んだでしょう？
エルシー： ええ、そうですね、レナード様、若くて勇敢な紳士が彼の人生の終わりに近づいているのは悲しいことですから。
フェアファクス： それであなたが私の腕に失神して倒れ込んだのは、彼の安全ゆえの歓びから？
エルシー： おそらくそうでしょう。私はあまりにも興奮したので、レナード様、私はただの女子(おなご)なので、それでそう、私は興奮していたので、失神したのです。
フェアファクス： さて、ご存じですか、私は極めて歓喜の気持ちで心が占められたことを？
エルシー： あなた様が？ 誰に対して？
フェアファクス： もちろん、かのフェアファクスに対してです、本当です！
エルシー： フェアファクス大佐に？
フェアファクス： そう。正直にあなたに言いましょうか？ エルシー ― あなたを愛しています、熱く、情熱的に！ （エルシー危険を感じ驚く）エルシー、この二日間あなたを愛するようになりました ― それは長い期間というもの ― そしてあなたを快く我が人生に迎えたいと思います！
エルシー： レナード様！ あなたは御冗談をおっしゃります！
フェアファクス： 冗談と？ もし冗談なら干しブドウとなって萎みましょう！ 私はあなたを熱病のような愛で愛しています ― 熱狂の愛をもって ― 我が心を食らいつくす愛をもって！ あなたは何と答えますか？ あなたは私の心が食らいつくされるのを放っておかれるのですか？
エルシー： （小声で）ああ、嬉しい！ 何と答えたらいいのでしょう？
フェアファクス： あなたは私を愛していますか、あなたはこの二日間気づかなかったのですか？
エルシー： 私はすべての勇敢な御仁を愛しています。
フェアファクス： いや、それでは食傷されるはず。天を思うに英国には多くの勇者がいます： しかしあなたが皆を愛するなら、私は感謝しながらも身を引きましょう。
エルシー： 私は最も勇敢な人を愛します。でも、サー、私は聞かなかったことにします ― 私は自由ではないのです ― 私は ― 私は人妻です！
フェアファクス： あなたは人妻と？ 誰の？ 彼の名前は？ 彼に残された時間は限りがある ― いや、彼の墓穴は掘られ、彼の墓碑銘は立てられよう！ さあ、彼の名前は？
エルシー： おお、サー！ 秘密を守ってください ― 運命が二人の間にたてたただ一つの壁なのです。わたしの夫は他ならぬフェアファックス大佐です！
フェアファクス： 首吊りになっていない最高位の悪党め！ キリスト教世界において最も嫌悪されるべき、無作法な、本性がねじ曲がった、吉凶なる、悪しき気性の奴(やっこ)め。
エルシー： 全くその通りです。彼は私には無の存在 ― 何故なら私は彼を見てもいないのです。私は目隠しをされ、それで彼は一時間内に死ぬ運命にあったのです； それで彼は死ななかった ― それで私は結婚したのでした、それで私の心は傷ついたのです！
フェアファクス： 彼は死ななければならなかった、そして彼は死ななかった？ やくざ者め！ 偽証、背信の悪党！ 君は彼の死を第一に主張すべき、確かなものとするため。それがこれらフェアファクス達にやるべきこと！
エルシー： 今はそうしていたらと願っています！
フェアファクス： （小声で）血に飢えた小娘だ！ （声を張り上げ）かのフェアファクスが何だといういのだ！ 私のものになるのだ ― 彼は永遠に知ることはなからろう ― 彼があえて身を晒すことはなかろう； もし彼があえて現れれば、あなたは彼には何の関係が？ 私と逃げよう、エルシー ― 明日にでも結婚しよう、そうして君は英国一の幸せな妻となろう！
エルシー： レナード様！ 私は驚いています！ それが勇敢な兵士が貧しい女子(おなご)に言う言葉ですか？ おお、破廉恥な、破廉恥な！ 私は結婚している事実は ― 私が夫を愛していない事よりも大きいのです。私は人妻です、サー、そう私には義務が、そして ― ああ、サー！ ― あなたの言葉の数々に私は怖くなります ― それらの言葉は不誠実 ― それらは邪(よこしま)な言葉、偉大で勇敢なあなたに合う価値もない！ おお、恥ずべきこと！ 恥ずべきこと！
フェアファクス： いや、エルシー、ただの御ふざけさ。君を試したまで ― （銃声が聞こえる）
（メリル軍曹急いで登場）
レシタシーヴ Hark! What was that, sir?
メリル 聞こえましょうか！ あれは何ですか、サー？フェアファクス なんと、火縄銃か ―
川岸から発砲されたかと、私の大きな間違いでなければ。
メリル 奇妙な ― こんな時間に！ どうしたことなのか！
（コーラス登場）
コーラス さて何が起こっているのだろう ―かほど遅き夜の発砲とは、
恐怖を覚うるに余りある！
兆しが意味するものは何か？
敵陣がこの国に押し寄せたか？
ロンドンは破滅されたか？
何を我らは予測すれば？
目の前の危険は何か？
我らに分からせたまえ
目の前の危険は何か！
（副長官、ポイント、ウィルフレッド登場）
レシタシーヴ
副長官 誰が発砲したのだ？ 直ぐにでも事実を述べられるか？ウィルフレッド 領主殿、私です ― 性急に回避すべくとの判断で！
ポイント 領主殿、彼です ― 性急に回避すべきとの判断で！
デュエット＆コーラス ― ウィルフレッド、ポイント
Like a ghost his vigil keeping
ウィルフレッド 幽霊のごとく寝ずの番は守っていた ―ポイント あるいは物(もの)の怪(け)のように全くぞっとするように
ウィルフレッド 私が凝視したのは這っていたある姿 ―
ポイント どちらかと言うと匍匐と言った方が ―
ウィルフレッド 彼は這っていた ―
ポイント 彼は匍匐していた ―
ウィルフレッド 彼は這っていた、這っていた ―
ポイント 匍匐していた！
ウィルフレッド 彼は這っていた ―
ポイント 彼は匍匐していた ―
ウィルフレッド 彼は這っていた、這っていた ―
ポイント 匍匐していた！
ウィルフレッド 躊躇する間もなく ―
私は体を彼の上に跳び乗り、
突進の叫びとともに
彼の服地を引き上げた；
荒々しく転げる混乱の中、
他ならぬフェアファクス大佐に
私はしがみついたのです！
全員 他ならぬフェアファクス大佐に
彼はしがみついたのです！
ウィルフレッド 激しい掴み合いと格闘の末 ―
ポイント というより死闘と言った方が ―
ウィルフレッド 彼は、より強い筋肉の力でもって ―
ポイント というより悪魔の手さばきにより ―
ウィルフレッド 私の組み手をくぐり抜け ―
ポイント どちらかというと滑り抜けと言った方が ―
ウィルフレッド 見渡せば、疑いもなく、隠れてしまい ―
ポイント それとも海運への逃避かと ―
ウィルフレッド 喘ぎとともに、それに震えとともに ―
ポイント 私なら痙攣と描写するね ―
ウィルフレッド 下に彼は川に飛び込んだ、
そして、何と、私は泳ぎが出来ない。
全員 痙攣させるに十分なり
喘ぎとともに、それに震えとともに、
下に彼は川に飛び込んだ；
彼はとても勇敢だった！
ウィルフレッド アイデアを見つけた；
我が王の歓びのために
歩哨の火縄銃をひったくり
ポイント どちらかと言うと強奪したと言った方が ―
ウィルフレッド １，２オンスの鉛でもって
私が急いで撃ったは彼の頭に！
全員 １，２オンスの鉛でもって
彼が急いで撃ったは彼の頭に！
ウィルフレッド 瞬きもせず私は発砲した、
考える時間はほぼなかった
まるで石のように彼は沈んでいった ―
ポイント 私なら鉛の塊と言いたい。
全員 瞬きもせず彼は発砲した、
考える時間はほぼなかった。
ウィルフレッド まるで石のように彼は沈んでいった ―
ポイント 私なら鉛の塊と言おう。
ウィルフレッド まるで石のように、友よ、私が言ったのは ―
ポイント 私なら鉛の塊と言いたい。
ウィルフレッド まるで石のように、友よ、私が言ったのは ―
ポイント まるで重い鉛の塊だ。
ウィルフレッド いずれにしろ、あの男は死んだ、
石であろうと鉛の塊であろうと！
全員 いずれにしろ、あの男は死んだ、
石であろうと鉛の塊であろうと！
歩哨から強奪した火縄銃で、
我が王の歓びのために、
ウィルフレッドは彼の頭を撃った、
そして彼は全く完全に死んだ！
そして石か鉛の塊かはどちらでもよいことだが、
全く完全に確かなこと、彼は全く完全に死んだ！
レシタティーヴ ― 副長官
川は浚われるべき ― 一刻の猶予もならん；死体は発見されるべき、いかなる対価を払ってでも。
不当な遅れなしにこれに参加するため；
だから作業に取り掛かるのだ手際よさをもって！
（副長官退場）
全員 了解、了解、我らは作業に取り掛かるのだ手際よさをもって！
（４人の人間がウィルフレッドを肩の上に抱え上げる）
コーラス
万歳を雄々しい男に彼が偉業はこの大胆不敵！
その人には栄誉が待ち受ける；
我が頭では、そは勇猛な行為、
さあ、我が頭では、そは勇猛な行為！
（エルシー、ポイント、フェアファクス、フィービーを除き全員退場）
注： 映像を見るとウィルフレッドが様子を述べるたびにポイントが割り込んで言葉を訂正するのでウィルフレッドが苛立つ様子が見られる。これはG&S オペラによくみられるコミック・パターンのようだ。例えば『ピナフォア』のI Am the Monarch of the Sea ではジョゼフ卿が歌うと従妹のヒービーが口を何度もはさみ卿がうんざりした表情になる。『ミカド』では「ミヤサマ」に続く From every kind of man obedience I expect というミカドが権威を誇示する歌でカティシャが義理の娘としての自分をより誇示しミカドが苛立つといった場面。（ダイアローグ）
ポイント： （泣いているエルシーに向かい）泣くんじゃない、可愛い娘よ、元気をお出し。かのフェアファクスはただの卑しむべき男、そして、彼が死ななければならなかったのは、このように死に方でなくとも必然。善い死と言えよう。
エルシー： それでも、彼は私の夫でした、そして夫ではなかった、それでも彼は生きていたのです、それでお許しください、私の涙は止まらないのです、ポイント様。
フェアファクス： それで君は事の成り行きをみたのか？
ポイント： もちろん、この両目で同時に ― これもあれも。片目だけの証言は無意味 ― 嘘となりましょう。しかし一方の目と協調すれば、誰も否定できない証拠となります。この両目は法廷に出せます、彼に宣誓する準備は万端！
フィービー： でもあんたは本当にフェアファクス大佐だったのは確実なの？ 彼の顔を見たの？
ポイント： そうです、はなはだしい悪意に満ちた顔でもありました。とてもおびえた犬の顔 ― 重罪人の顔 ― 首切り役人の怯え顔、それで彼は斜めにたたき切ってしまう。おお、癪にさわる、悪党面、私の言葉を信じて下され。（フィービーとフェアファクス大笑い）なんと彼らは笑っておる！ 平民に対してはいつもそう ― 許された頓智は「マスタードを取ってくれ」だけ、それで彼らはあばら骨が飛び出しそうに笑っている。
フェアファクス： （小声で）もし私が生き返ったら、君は報いを受けなければ、ポイント先生！
ポイント： さあ、エルシー、君は再び自由に選べるんだ、私を見てごらん： 私は若くて善意に満ちている。私はすごい機知がある、私は君におちゃらけ、軽口、頓智、言葉もじり、悩まし、謎々をしよう ―
フェアファクス： フン、おい、君は求愛の方法は知らないではないか。古びたおちゃらけや擦り切れた屁理屈じゃあ求愛できないだろ； 頓智、謎かけ、韻詩、それに詭弁などでは。求愛とはそれ自体が芸術そのもの、厳かに良心に従い努力しなければ。
トリオ ― エルシー、フィービー、フェアファクス
A man who would woo a fair maid
フェアファクス 可愛い乙女に求愛する気の男は、商売ごとの年期奉公人にならなければ；
そして一日中努力する、
整然とした手順で、
いかにおだて、言いくるめ、そして説き伏せるかを。
彼は十四歳の年季奉公人にならなければ、
それで朝から夕方まで練習する；
それで年季が明けたら、
彼にその気があれば、私は契約してあげよう、
彼は女王の心をつかみ取るかもしれない！
全員 これは純粋に技能の問題、
彼らにその気があれば達成できよう、
しかしいずれのジャックも
こつを勉強しなければ
もし彼のジルを確実に彼のものにしたければ！ ★１
エルシー もし彼が時間を最大限に活用すれば、
彼の小枝に十分注意して鳥もちを仕かければ
どんな小鳥も
彼の言葉によって来るもの、
羽毛や生息地がどうあろうと。
彼は触れあうときめきを学ばなければならぬ
ほぼ意味なきかも、それとも何もなく、あるいは数多に；
それは稀なる実験器具、
留意して操作すべきの、
そのように取り扱うべきもの。
全員 これは純粋に技能の問題 （繰り返し）
フィービー それから一瞥の方法は臆病にあるいは大胆に；
程度は大きく異なるものだろう、
厚かましくも凝視することから
絶望のまなざしまで
憐みのない乙女には見えぬもの！
そして絶望のまなざしには道案内はおらず ―
馬鹿げた側面をもつやも；
あなたに涙の筋を描かせるやも
あるいは横顔を叩かれるやも；
あなたが試してみるまで確信できないはず！
試してみるまで確信はできないはず！
全員 これは純粋に技能の問題 （繰り返し）
★１： ジャックとジルは英国童謡に出てくる男子と女子の名前で男女ペアを象徴する名前
（ダイアローグ）
フェアファクス： （ポイントに向かい小声で）さあ、聞け ― このようにするもの ― （声をあげて） ― エルシー夫人、ここに一人います、あなたがご存じの、あなたを同じように愛している男が！
ポイント： （小声で）彼のことか ― 同じようにか！
フェアファクス： 彼はただ貧しい財産しかもたぬ男、しかし彼は愛しているのです、正直な心で。彼は誠意ともって頼れるあなたの夫になりましょう、そしてあなたが彼の妻になるならば、あなたは彼の心にくるまれて安らぐでしょう、まるで小さな栗鼠が巣にこもるように！
ポイント： （小声で）酷い絵だ。近くにあるナッツの中のウジ虫か、だが栗鼠ならいいか。
フェアファクス： 彼はあなたが人妻であったことを知っています ― 愛し愛されたこともない人妻、そして彼の哀れな心は壊れかかっています。しかし今あなたの愛のない夫は死んだ、そしてあなたは自由だ、彼は喜んで君が彼の言葉を傾聴すると祈るだろう、そして君がいつか彼のものとなるという希望を与えることを！
フィービー： （驚いて）彼は彼女に手を重ねている ― そして彼女の耳元で囁いている！ ちくしょう、どういったことなの？
フェアファクス： さあ、恋人よ、言ってくれ ― 君は哀れな善き男の妻になってくれぬか？
エルシー： もし善き、勇敢であれば ― 彼は勇者ですか？
フェアファクス： 人はそう言っている。
ポイント： （小声で）真実じゃない、でもここはやり過ごそう。
エルシー： もしその勇者が貧しく、一文無しの、無学な女子(おなご)で満足するならば ―
ポイント： （小声で）未亡人だろ ― だがここはやり過ごそう。
エルシー： 私は彼の誠実で愛に満ちた妻となります、そう心の中の心から！
フェアファクス： 我が愛しの恋人よ！ （彼女を抱きしめる）
フィービー： （大きく動揺しながら）なぜ、一体何なの？ 兄さん ― 兄さん ― ふさわしくないわ！
ポイント： （同じく驚いて）おお、ここはやり過ごせないぞ！ （声をあげて）待て、十分だ、レナード殿！ 弁護人は報酬を得るべきもの、しかし我思うに君自身を買いかぶりすぎでは？
フェアファクス： いいや、その言葉はエルシーが言うべきこと。私は君にどうやって求婚するか示すと約束した、そしてここに我が教えの美徳を証明した！ 行くのだ、そして他の誰かに適用せよ！ （フィービー涙がはじける）
カルテット ― エルシー、フィービー、フェアファクス、ポイント
When a wooer goes a-wooing
エルシー 求婚者が求婚に行く時、
真実は無意味
彼の歓びに比べ。
フェアファクス 乙女は黙る
彼の口説き文句に ―
大胆にも赤面し、
勇敢にも羞恥す！
全員 おお、骨折り仕事の幸せな日々よ！
おお、ため息しそして口説くこと！
求婚者が求婚に行くとき、
おお、なんとも満腹することなき甘味か！
フィービー 兄が
妹から離れるとき
他の人の所に、
妹は泣き崩れる、
したたり落ちる涙、
水ぶくれの涙 ―
ただ大いなる
報いが妹に！
全員 おお、骨折り仕事と取り消し仕事、
おお、ため息しそして口説くこと、
兄が求婚に踏み切ったときに、
妹のむせび泣きが！
ポイント 道化師が
出し抜かれたとき、
気分はくすぶり、
心は鉛！
魚に餌だけが、
ただ適したこと、
道化師が願うは
彼の死！
全員 おお、骨折り仕事と取り消し仕事、
おお、ため息しそして口説くこと、
道化師が求婚に行く時、
彼の望みは彼の死！
（泣き続けるフィービーを除き他は退場）
（ダイアローグ）フィービー： それで私はあの人の脱出を手助けし、それから彼の秘密を守り、それから私は彼の愛する妹になり、それから考えうる限りなんでもして私が彼の愛する妹だとみんなに信じこませたのに彼の謝意はこれとは！ 次に彼の妹のふりを人にするときは、私は修道女に変わり、あらゆる人の妹（シスター）になりたい ― 誰にでも！
（ウィルフレッド登場）
ウィルフレッド： 泣いているのか？ どんな災いであんたは嘆き悲しんでいるんだ？フィービー： 何故嘆き悲しんでいるかって？ あなたは嫉妬でよくわめいて ― そう、嫉妬で泣いているのよ。そうよ、黄色い、胆汁(むかつき)、黄疸(ひがみ)の嫉妬よ。判りなさいよ、ウィルフレッドさん。
ウィルフレッド： でも俺はあんたを嫉妬させるようなことはしたことはなかったぜ。副長官の料理女と俺との醜聞があるくらいだが！
フィービー： あんたへ嫉妬！ ふん！ 私はいくじなしのお山の大将 ― 威張り散らすのは弱い者だけの人になんか嫉妬しないわ！ 私が嫉妬しているのは別の人であんたなんかより凄い男よ ― 腰を下ろしなさいな、ウィルフレッドさん。彼はエルシー・メイナードと結婚しようとしているの、あの青白くちびの馬鹿女と ― 腰を下ろしなさいよ、ウィルフレッドさん ― それで私の心は傷ついているの！ そう、分かったでしょ！ 判りなさいよ！
ウィルフレッド： あんたが愛している男はエルシー・メイナードと結婚？ 何故だ、それはあんたの兄の、レナード・メリルに他ならないじゃないか！
フィービー： （小声で）あらまずい！ なんと言おうかしら？
ウィルフレッド： なんでだ、どういうふうにしてこの兄となるんだ、うそつきの小娘よ？ 言うんだ！ あんたが兄と呼んで、可愛がり、甘やかし、キスしている ― 俺が黙認した、この男は誰だ？ おお、神様！ 俺の黙認！ ハッ！ フェアファクスのはず！ （フィービー出ようとする） そうだ！ あの告発されたフェアファクスだ！ フェアファクス！ フェアファクス、彼は ―
フィービー： あんたが頭めがけて撃って、川の底に沈めたのは誰？
ウィルフレッド： お、お、おれは間違ったようだ。 俺たち人って間違うもの、いい人でも。 でも確かめなければ ― 確かめなければ。（行きかける）
フィービー： 待ちなさい ― 一言だけ。考えるにフェアファクスのはずがないわ ― 思うに、つまり考えるに ― だってあんたはフェアファクスを殺したじゃない。でも彼がフェアファクスであれフェアファクスでなかれ、彼はエルシーと結婚する予定 ― それで ― それで ― あんたが彼の頭を撃ったから、彼は死んで、それで満足じゃない、それで私はあんたの妻になってあげるわ！
ウィルフレッド： 確かなのか？
フィービー： 確かよ、他に方法がないもの！ あんたはとても野蛮な人 ― でも野蛮人でも結婚できるもの、そう思うわ。
ウィルフレッド： 俺の可愛い女。（彼女を抱きしめる）
フィービー： （小声で）ウヘ！
（レナード・メリル急いだ様子で登場）
レナード： フィービー、喜べ、良きしらせを持ってきた。フェアファクス大佐の赦免状は二日前に署名された、しかしポルトホィッスル書記官の不正で悪意により隠されていたのだ、彼は大佐の死後到着するように画策したのだ。つい先ほど手元につき、今は副長官の手にある！フィービー： それでは大佐は自由に？ ああキスして、キスして、大事なあなた！ キスして、何度も何度も！
ウィルフレッド： （逆上に手足をばたつかせながら）ちくしょう、お終いだ！ お前は狂っているのか？ 俺は狂っているのか？ 俺たちは狂っているのか？
フィービー： おお、大事なあなた ― 大事な人、私は歓びでほとんど狂いそう！ （レナードにキスする）
ウィルフレッド： やつから離れろ、このお転婆 ― このあばずれ ― このキスしたり、抱きついたりしている妖婦め！ それであんたに関しては、サー、悪魔があんたを連れてきたか、あんたをニシンのようにこう引き裂いてやる！ 皮を剥いでやる！ 背骨に割れ目を作ってやる！ 俺は ― おお！ フィービー！ フィービー！ こいつは誰だ？
フィービー： 落ち着いて、バカ。彼は私の兄よ！
ウィルフレッド： 別の兄か！ もっと他にいるのか？ 一度に何人も創りあげて、教えろ最悪な知らせを！
フィービー： これが本当のレナードよ、間抜け； 他はただの代理人よ。本物のレナード、つまり ― 私の父の本当の息子。
ウィルフレッド： どうやって分かるというんだ？ 彼は『兄です』と額に書かれているのか？ お前の兄などと怪しいものだ！ お前はまったくの偽物のヒスイ（あばずれ）だ。
（レナード退場）
フィービー： まあ、ウィルフレッド、落ち着いてよ。確かにあんたを前は騙したわ ― でもそれは大事な命を守るため ― そして守っておくため、私のためでなく、他の人のため。彼らはまさにこの日に結婚するはず。十分わかったでしょ？ さあ ― 私はあんたのフィービーよ ― あなただけの ― それで私たちは一年のうちに結婚するの ― それとも二年 ― それとも三年、長くて。それであんたは満足でしょ？（メリル軍曹興奮気味に登場、ついて来たのはカラザーズ婦人で隠れているが会話は聞こえる）
メリル： フィービー、勇敢な知らせを聞いたか？フィービー： （まだウィルフレッドの腕の中）ええ、父上。
メリル： 気も狂わんほどに喜ばしい！（ウィルフレッドを見て）おや、どうしたことか？
フィービー： おお、父上、彼は私が浮かれていたことで私たちの秘密を発見したの ― それで沈黙の代償として ―
ウィルフレッド： フィービーの心を。
フィービー： おお、あなた違うの ― フィービーの手よ。
ウィルフレッド： どっちにしても同じこと！
フィービー： そうなのかな？
（ウィルフレッドとフィービー退場）
メリル： （彼らを見守りながら）悲しいこと、だが大佐がいかなる対価を払っても救われた、それでお前の浮かれ騒ぎで我らの秘密が明かされた、お前の浮かれ騒ぎの対価だ！ （カラザーズ婦人が近寄る）カラザーズ婦人！婦人： それでこれが大悪魔の盾となる計略だったのですね、私は見破りました。私の一言で、彼の他にも三つの首が肩から転げ落ちましょう！
メリル： いえ、フェアファクス大佐は赦免されました。（小声で）しかし、もし彼の逃走に関する私の共謀が知られてしまったら！ おせっかいな老婆に厄災あれ。何もないはずだが ― （声をあげて） ― 静かに、可愛い人！ そのような血に飢えた悪しき言葉がサクランボの唇から出てくるとは！（小声で）ウへ！
婦人： （顔を赤らめ）メリル軍曹殿！
メリル： おや、いいですか、雌鶏さん ― ここ何カ月もの間私は ― 私は自分自身のことを考えたのです ― 「誰かさんに関して中年男の胸中に密かな愛情がありそれが増え続けている、それはあなた以外ではありえない ― それが私で ― だから心の内を彼女に伝えろと ― それはあなたに ― それはあなたの ― それは私が ― 彼女を愛していると ― あなたを ― そして ― そして ― まあ、私は惨めな老人、それで私は思って来たのです ― それが私です！」 しかしフェアファクスに言及しなければ！ あなたの沈黙の代償は ―
婦人： メリルの心？
メリル： いいえメリルの手です。
婦人： どちらにしても同じこと！
メリル： そうなのかな？
デュエット ― カラザーズ婦人とメリル軍曹 Rapture, rapture
婦人 歓喜なり、歓喜なり愛の信奉者が、
勝ち取って紅潮したとき、
書記を捜し、
歓びと楽しみを
それから政府；
手綱で操るは軽薄！
歓喜なり、歓喜なり！
メリル 悲痛なり、悲痛なり
人間性の
その魂が
悪魔性に満ちると、
相互関係を求め
急勾配を下り
捕囚を捜す！
悲惨なり、悲惨なり！
婦人 悦びなり、悦びなり！
未婚女が
求めるは、はにかみに満ちて、
男性との婚姻を；
運命が満開に花開き、
明るいあずまやは
彼女への結婚祝！
悦びなり、悦びなり！
メリル ぞっとする、ぞっとする！
男が、悲しみに満ちた、
最初も、最後も、
明日の真っ盛り、
待ち望んだ後に、
報いは急かせること ―
結婚に踏み切ること。
ぞっとする、ぞっとする！
二人 歓喜なり、歓喜なり （繰り返し）
（カラザーズ婦人、メリル軍曹退場）
第二幕 フィナーレ
（近衛兵、女性たち登場）
女性たちのコーラス（哀歌） Comes the pretty young bride
可愛らしく若い花嫁が来ます、紅潮し、おずおずと、身を縮めて ―
あらゆる恐れを脇に置き ― 明るく可愛らしく若い花嫁！
勇気とは君のこと運命は君と進んでつながる
戦場での豪勇の花なる彼 ― 最もなる愛すること！
明るくあなたの夏は輝いている！
夜明けのごとく清らかな；
彼の手を取りなさい、彼には真でいなさい ―
彼の報いとなるべく優しくせよ ―
彼を誇り、愛し従うのだ！
（婦人、フィービー、花嫁姿のエルシー登場）
トリオ ― フィービー、エルシー、婦人
全く完ぺきなる悦びよ
訪れるは女にただ一度 ―
それは、他の時に、精密検査を、
私たちが見つけるであろう潜んでいる苦みなど。
我が悦びの日がしかるべく明けた
幸福で 私の/彼女の 魂は満腹している ―
これぞ 私の/彼女の 純粋な悦びの日！
全員 幸福で彼女の魂は満腹している！
これぞ彼女の純粋な悦びの日！
（華麗に副長官登場）
副長官 しばし待て、可愛い娘！ 私は君に持ってきたは
知らせ ― 良いか悪いか、君に言うベきことは
そなたの夫は生きており ― そして自由になった
そして彼の花嫁を権利として要求しに今日この日！
エルシー いや！ いや！ この言葉を撤回願います ― あり得ません！
アンサンブル Oh, day of terror!
おお、恐怖の日！ 涙の日！
その男は誰です、誇り高く
貴方に花嫁を要求する彼は？
恐怖の日！ 涙の日！
副長官、メリル、ウィルフレッド
さあ、その思わず流れる涙を拭いて、
最も悦ばしい波が君の耳に来よう、
貴殿が連れしその男
彼の花嫁を要求しているようだ。
カラザーズ婦人とフィービー
おお、恐怖の日！ 涙の日！
貴方が連れてきた男
彼の花嫁と要求しているようだ。
恐怖の日！ 涙の日！
エルシー
おお、レナード、私の近くに来て下さい、
そしてあなたの花嫁と主張して下さい！
恐怖の日！ 涙の日！
（華麗にフェアファクス登場、美しく着飾り、紳士たちを従えている）
Leonard, my loved one, come to me
フェアファクス（厳格に） レナード・メリルへの思いすべてを脇に除けよ。
そなたは私のもの！ 私はそなたを花嫁と主張する。
全員 あなたは彼のもの！ 嗚呼！ 彼はあなたを花嫁と主張している。
エルシー 懇願者としてあなたの足元にひれ伏します；
あなたの心は同情の呼び声を生みましょう！
フェアファクス 我が心は巨大なる岩、
感傷の攻撃でも動かぬ！
全員 そなたの夫であるぞ彼は！
エルシー（小声で） レナード、愛する人 ― 私の所に来て。
彼らはこのように私を駆り立てています！
でもたとえ彼らがあなたから私を遠ざけたとしても、
私の心はあなたにあります永遠に！
私の傷んだ心は、
私の壊れた心は、
あなたのものです、永遠に！
あなたのものです、永遠に！
（フェアファクスに） サー、私は従います！
私はあなたの花嫁です；
しかし運命の時間の前に
私はこう言う
それはあなたの力で私を置くは
私の死をまねくこと！
サー、私は従います！
私はあなたの花嫁です！
（見上げてフェアファクスだと分かる） レナード！
フェアファクス 私の人！
エルシー ああ！（抱きしめる）
エルシー＆フェア 幸福で私の魂は満腹させられた！
これぞ私たちの純粋な悦びの日！
全員 そうだ、そうだ！
幸福で彼らの魂は満腹させられた！
これぞ彼らの純粋な悦びの日！
（ジャック・ポイント登場）
I have a song to sing, O!
ポイント おお、無慈悲なる連中
なにをしているのか分からないのか！
僕の所に寄って、そして涙をすこしばかり流そう ―
だって僕には歌う歌がある、オー！
全員 あなたの歌を歌ってよ、オー！
ジャック 月が歌われたものなのさ
愛に見捨てられた間抜けによってね、
彼はあざける群衆から逃げたのさ、オー！
それはふさぎ込んで口を開かない道化の歌、
彼の心は悲しみに満ちて、彼の姿は陰欝、
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
全員 ヘイディ！ ヘイディ！
惨めな自分 ― 気力もなくし！
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
エルシー 私には歌う歌がある、オー！
全員 君の歌は何の歌なの、オー！
エルシー それは鐘をならして歌う歌
娘が歌う歌
彼女は一生かけて恋人を愛した、オー！
それは道化娘の歌、近くに横たわり、
彼女は貴族に恋をし ― しかし彼女は涙した、
ある朝の道化師、ふさぎ込み無口
彼の心は悲しみに満ちて、彼の姿は陰欝、
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
全員 ヘイディ！ ヘイディ！
惨めな自分 ― 気力もなくし！
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
ヘイディ！ ヘイディ！
（フェアファクスはエルシーを抱き、ポイントは失神し彼らの足元に倒れる）
幕
（近衛兵、女性たち登場）
女性たちのコーラス（哀歌） Comes the pretty young bride
可愛らしく若い花嫁が来ます、紅潮し、おずおずと、身を縮めて ―あらゆる恐れを脇に置き ― 明るく可愛らしく若い花嫁！
勇気とは君のこと運命は君と進んでつながる
戦場での豪勇の花なる彼 ― 最もなる愛すること！
明るくあなたの夏は輝いている！
夜明けのごとく清らかな；
彼の手を取りなさい、彼には真でいなさい ―
彼の報いとなるべく優しくせよ ―
彼を誇り、愛し従うのだ！
（婦人、フィービー、花嫁姿のエルシー登場）
トリオ ― フィービー、エルシー、婦人
全く完ぺきなる悦びよ訪れるは女にただ一度 ―
それは、他の時に、精密検査を、
私たちが見つけるであろう潜んでいる苦みなど。
我が悦びの日がしかるべく明けた
幸福で 私の/彼女の 魂は満腹している ―
これぞ 私の/彼女の 純粋な悦びの日！
全員 幸福で彼女の魂は満腹している！
これぞ彼女の純粋な悦びの日！
（華麗に副長官登場）
副長官 しばし待て、可愛い娘！ 私は君に持ってきたは知らせ ― 良いか悪いか、君に言うベきことは
そなたの夫は生きており ― そして自由になった
そして彼の花嫁を権利として要求しに今日この日！
エルシー いや！ いや！ この言葉を撤回願います ― あり得ません！
アンサンブル Oh, day of terror!
ケイトとコーラス
おお、恐怖の日！ 涙の日！
その男は誰です、誇り高く
貴方に花嫁を要求する彼は？
恐怖の日！ 涙の日！
副長官、メリル、ウィルフレッド
さあ、その思わず流れる涙を拭いて、
最も悦ばしい波が君の耳に来よう、
貴殿が連れしその男
彼の花嫁を要求しているようだ。
おお、恐怖の日！ 涙の日！
その男は誰です、誇り高く
貴方に花嫁を要求する彼は？
恐怖の日！ 涙の日！
副長官、メリル、ウィルフレッド
さあ、その思わず流れる涙を拭いて、
最も悦ばしい波が君の耳に来よう、
貴殿が連れしその男
彼の花嫁を要求しているようだ。
カラザーズ婦人とフィービー
おお、恐怖の日！ 涙の日！
貴方が連れてきた男
彼の花嫁と要求しているようだ。
恐怖の日！ 涙の日！
エルシー
おお、レナード、私の近くに来て下さい、
そしてあなたの花嫁と主張して下さい！
恐怖の日！ 涙の日！
おお、恐怖の日！ 涙の日！
貴方が連れてきた男
彼の花嫁と要求しているようだ。
恐怖の日！ 涙の日！
エルシー
おお、レナード、私の近くに来て下さい、
そしてあなたの花嫁と主張して下さい！
恐怖の日！ 涙の日！
（華麗にフェアファクス登場、美しく着飾り、紳士たちを従えている）
Leonard, my loved one, come to me
フェアファクス（厳格に） レナード・メリルへの思いすべてを脇に除けよ。そなたは私のもの！ 私はそなたを花嫁と主張する。
全員 あなたは彼のもの！ 嗚呼！ 彼はあなたを花嫁と主張している。
エルシー 懇願者としてあなたの足元にひれ伏します；
あなたの心は同情の呼び声を生みましょう！
フェアファクス 我が心は巨大なる岩、
感傷の攻撃でも動かぬ！
全員 そなたの夫であるぞ彼は！
エルシー（小声で） レナード、愛する人 ― 私の所に来て。
彼らはこのように私を駆り立てています！
でもたとえ彼らがあなたから私を遠ざけたとしても、
私の心はあなたにあります永遠に！
私の傷んだ心は、
私の壊れた心は、
あなたのものです、永遠に！
あなたのものです、永遠に！
（フェアファクスに） サー、私は従います！
私はあなたの花嫁です；
しかし運命の時間の前に
私はこう言う
それはあなたの力で私を置くは
私の死をまねくこと！
サー、私は従います！
私はあなたの花嫁です！
（見上げてフェアファクスだと分かる） レナード！
フェアファクス 私の人！
エルシー ああ！（抱きしめる）
エルシー＆フェア 幸福で私の魂は満腹させられた！
これぞ私たちの純粋な悦びの日！
全員 そうだ、そうだ！
幸福で彼らの魂は満腹させられた！
これぞ彼らの純粋な悦びの日！
（ジャック・ポイント登場）
I have a song to sing, O!
ポイント おお、無慈悲なる連中なにをしているのか分からないのか！
僕の所に寄って、そして涙をすこしばかり流そう ―
だって僕には歌う歌がある、オー！
全員 あなたの歌を歌ってよ、オー！
ジャック 月が歌われたものなのさ
愛に見捨てられた間抜けによってね、
彼はあざける群衆から逃げたのさ、オー！
それはふさぎ込んで口を開かない道化の歌、
彼の心は悲しみに満ちて、彼の姿は陰欝、
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
全員 ヘイディ！ ヘイディ！
惨めな自分 ― 気力もなくし！
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
エルシー 私には歌う歌がある、オー！
全員 君の歌は何の歌なの、オー！
エルシー それは鐘をならして歌う歌
娘が歌う歌
彼女は一生かけて恋人を愛した、オー！
それは道化娘の歌、近くに横たわり、
彼女は貴族に恋をし ― しかし彼女は涙した、
ある朝の道化師、ふさぎ込み無口
彼の心は悲しみに満ちて、彼の姿は陰欝、
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
全員 ヘイディ！ ヘイディ！
惨めな自分 ― 気力もなくし！
彼はスープも喉を通らず、パンのひとかけらさえも懇願しない、
そして彼はある淑女のためにため息する。
ヘイディ！ ヘイディ！
（フェアファクスはエルシーを抱き、ポイントは失神し彼らの足元に倒れる）
幕
参考ページ
・台本： ギルバート＆サリヴァン・アーカイヴ のページ
・用語： G&S Lexicon
・解説： Wikipedia
参考とした映像
・ YouTube The Yeomen of the Guard, by Gilbert and Sullivan (2009 production)
上演時間 2時間35分で、ほぼ台本通りの劇となっている。
・ YouTube The Yeomen of the Guard, by Gilbert and Sullivan (2012 production)
上演時間 2時間23分（ダイアローグは一部略されている）
・ dvd： 1982年の BBC 作品で道化師役はキャバレーのMC を演じたジョエル・グレイ。
上演時間１時間55分。放映時間の関係だろうがいくつかの歌、セリフはカットされている。
またダグラス・フェアバンクス・ジュニアの解説があり、実質１時間50分程の劇。
2024/01/10 訳
2024/01/25 PDF文書 から html に変更
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