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書籍『アメリカン・シンガーズ』からの抜粋
Excerpts from American Singers
American Singers (紹介ページ) から。
2019/04/15 作成
『ノウブル・セシルの手助けで私は英国に行くことができた ・・・ 私は英国劇団のショー・ボートのオーディションを受け、クィーニー役を演じたの。イーディス・デイがスターで、セドリック・ハードウィック卿はアンディ船長、ポール・ロブスンはジョーを演じた。古くからの友達のメイベル・マーサーはコーラスで参加。ポールが「オール・マン・リヴァー」を歌うと遠くから聞こえる鐘のようでみんな叫びそうになったものよ。ジョージ王とメアリー王妃が来た夜のこと、ポールは音を外してしまい、取り返すことが出来なくなったの、その後彼は子供のように泣きじゃくっていたわ』(アルバータ・ハンター）
『僕の本名はレイ・チャールズ・ロビンソンと言うんだ。シュガー・レイ・ロビンソンは僕が出たての頃は大物だったので、僕はファーストとミドル・ネームは残し、ラスト・ネームは落としたのさ。それから、もちろん、後に別のレイ・チャールズと出会うことになったけど、あのコーラス・グループの、でも問題になったことなんてなかったよ、ただたまに互いの手紙が間違ってきたことはあったけど』（レイ・チャールズ）
『それから僕はタンパに行ったんだ。そこには音楽店で働く知り合いがいて、彼はある夜僕をある小さなクラブに連れて行って、ピアノの前に座らせて、 Florida Playboys というヒルビリー・グループと共演することになったのさ。 ピアノ奏者が病気になって僕は仕事を得たのさ。おかしなもの、彼らは白人、でも彼らはいつでも僕に善くしてくれたのさ。毎晩彼らは僕を家に連れて行ってくれたし、女の子たちが現れて彼らに話しかけても僕は疎外感なんて感じなかったよ。僕は白人の女の子を追い回すことに興味はなかったから。僕の興味は音楽と手にいくらかの金があるかってことだけだったのさ。僕はいつでもヒルビリー音楽が好きで、グランド・オウル・オゥプリーを逃したことなんてなかったのさ。それは正直な音楽で、洗練されていないんだ、今でもそう。彼らは 'I sat there and dreamed of you'（僕はそこに座り君を夢見る） なんて歌わないのさ。歌うのは 'I missed you and I went out and got drunk' （お前が恋しい、だから俺は外に出て酔っぱらうのさ）って具合』（レイ・チャールズ）
『ファッツ・ワーラーと知り合いになったの。彼は足が悪かったわ。思い出すのは彼がアップタウンの小さな教会でオルガンを弾いていたことで、彼は裸足でポンピングをしていたわ。その後アート・テイタムとも知り合いになったわ。彼は私をムーンビーム・モスコヴィッツ Moonbeam Moscowits と呼んだの、ユダヤ系インディアンだから。彼は仕事終わりに私をアップタウンに連れて行って、優しく暖かな演奏を聞かせてくれたわ、それは決してダウンタウンでは弾かないものだったわ（★）』（シルヴィア・シムズ）
★：黒人向けの演奏と白人向けの演奏を分けていたということか
『ビリー・ホリディは私のメンターになったの。彼女のやることはなんでもコピーしたわ、ドラッグや酒は別よ。彼女は「あんたの間違っている所は分かる？ お嬢ちゃん、 あんたが私を好きだってこと」・・・一度私はお金をためて彼女にプリント・ガウンを誕生日に贈ったの。彼女はとても喜んでくれて、まるで棒付きの月をあげたみたいみたいだったわ』（シルヴィア・シムズ）
『僕の父は、1900年代の初期にブレスト・リトフスク（★）からニューヨークに住んだ移民なんだ。エリス島にある移民局で父は間違って Torma から Torme に名前を変えられたんだ。高校の頃、僕はアクセント記号をつけて Tormé に変えたのさ』（メル・トーメ）
★：現ベラルーシの都市だろう
『僕は同じ歌を同じように歌ったことがないんだ。僕は（歌う毎に）リチャード・ロジャーズの歌一覧にチェックを入れていったのさ、で彼は僕のアイドルになったのさ。彼はリハーサルで僕が Blue Moon を歌ったのを聞いていたことがあって、僕はフレーズを少々変えて歌ったんだけど、「違う、私の歌はそう歌うんじゃない。君はこんな風に歌ったじゃないか、ワン・トゥー・スリー・フォー ・・・」。僕は彼に歌詞を会話的に歌おうとしただけと説明したんだ。後日、デヴィッド・フォスターがリチャード・ロジャーズへのトリビュートＴＶショーを作ったとき、ロジャーズはゲスト歌手として歌った、シナトラ、ペギー・リー、エラ、それに僕をこき下ろしたのさ。何故ってみんな彼の歌を自分流に歌っていたからさ』（メル・トーメ）
『ジョニー・マーサーが最初に訪れたとき、私の父（リチャード）が母に言ったの、「エレノア、この人物は天から才能を授かった人だよ。カーンやガーシュインがいるけど、今後はマーサーだよ」 』（マーガレット・ホワイティング）
『多分千曲ぐらいの歌を知っているわ。３、４百 曲くらいの歌は練習せずに歌えるはず。昔学んだことは、歌う時は自分が何を歌っていることを心にとどめておくべきべきってこと。歌の最中に、もし変な思いが頭の中に浮かんでしまったら、歌詞を忘れてしまいがちなの。何回か経験があるの。そんな時は、思い出すまで今歌っていたところをリピートしたり、ナンセンスを１、２行歌うの』（メイベル・マーサー）
『私はいつも歌詞とその意味について考えていて、私のリスナーが歌詞が何を言っているのかヴィジョンを感じられるようにしているの。私たち誰でも悲しみや涙や笑いを知っている、だから私の仕事は自分のエモーションを歌うことでなくリスナーのエモーションを歌うことなの。そうすればみんなその気持ちを家に持っていけるはず』
『僕はミルドレッド・ベイリーと着替え部屋をシェアすることになって彼女の興味深い内面を見ることになったんだ。あの豊かな胸部と樽のような体つき、それに爪楊枝のような足にもかかわらず、彼女はとてもうぬぼれが強かったんだ。彼女は愛すべき顔立ちと綺麗な肌をしていたけど、ショーの合間にはずっと鏡のついたドレッシング・テーブルの前に座り続けて、顔を直し自分自身を見続けていたものさ』（ボビー・ショート）
『1952年に私はニコール・バークレイと知り合いになったの。彼女と彼女の夫はバークレイ・レコードを経営していて、ニコールは私にパリに行くか聞いたので、私は了承して船に乗ったの。彼女の祖母の所に住みベルリッツでフランス語を学んだの。私はパリの Mars Club で働き、アニー・ロスとはロンドンのクラブで仕事したわ。私はブルー・スターズ・オヴ・パリスというグループを結成したの、スウィングル・シンガーズはこのグループから派生したグループ。男子４人と女子４人のグループで、男子は楽器と歌を女子は歌だけ。メンバーにクリスチャン・ルグランがいたけど彼女はミシェルの姉、それにシュガー・レイ・ロビンソンに同行してパリに来ていたボブ・ドローもいたわ』（ブロッサム・ディアリー）
『ライオネル・ハンプトン、彼は私にハンプトンかディジー・ガレスピーのバンドのどちらが好きか聞いたの。私はガレスピーと答え、彼はディズとチャーリー・パーカーに嫉妬したんで私はその夜は歌わせてもらえなかったの ・・・ 私はディズの音楽が好きだったしスキャットを歌っていたので、ハンプトンは私のことをベティ・ビーバップ（★）と呼んだの。私はロレイン・カーターを使っていたけど、気に入ったので最終的にベティ・カーターに変えたの』（ベティ・カーター）
★：アニメ・キャラクターのベティ・ブープからの連想か？
『あの当時私たちはあえて模倣はしないようにしたの。私たち黒人にとって他の偉大な人を模倣することは簡単ではなかったの。黒人社会では二番目のサラ・ヴォーンは決して尊敬されることはないわ。白人世界では、彼らは互いを模倣し合うわ。スタン・ゲッツには多くの模倣者がいる、彼のサウンドはレスター・ヤングの模倣だけど』（ベティ・カーター）
『僕が心服するのは、フランク・レッサー、イップ・ハーバーグ、ジョニー・マーサー。レナード・バーンスタインは素晴らしいソング・ライター、ウェスト・サイド物語の歌は凱旋に値するもの。ソンドハイムは誇っていいね。ハル・ディヴィッドはすごい作詞家。彼がバカラックの奇抜で大胆な曲を初めて聞いたときはめまいを覚えたに違いないよ。コール・ポーターとラリー・ハート（ロレンズ・ハート）は言葉で遊んでいるように僕には感じる。マーサーとレッサーは意味とコミュニケートしながら作業している。彼らはいい歌詞というのは詩のようには聞こえないと知っているんだ。彼らはいい歌詞というのは、抒情的に表現した文学的なスピーチで、何かを伝えることとと知っているに違いないよ。彼らはよい歌詞は詩の縁付近に来た時に左折させるものと知っているんだ』（デイヴ・フリッシュバーグ）
『彼は、可笑しみを込めて自分自身のことを「後衛国（デリエ・ギャルド国） (★）の大統領」と呼んでいた。
しかし彼自身はユニークで冒険的な作品を生み出してきたのは皮肉なことだ。
・・・ワイルダーは歌手が彼のポピュラー・ソングを書かれた通りに歌うことを要求し、歌手が勝手に変えることでトラブルとなったことがあった
・・・ しかしこれもワイルダーのアイロニーで、彼自身はジャズの熱心な門下生であったのだ』（アレック・ワイルダー）
★：derrière-garde =後衛は、前衛（アヴァン・ギャルド）を逆手にとった言葉
『私は近くのレコード店でアイシャム・ジョーンズのレコードを買いに行ったものだが、63番通り劇場で、ノウブル・セシルとユービー・ブレイクの全黒人ショーの「シャッフル・アロング」が開演されたばかりなのを知ったんだ。思い出せない程何回も見たものだった。しかし大評判となる前だったので、私はガラガラの劇場に入り、ブレイク氏を見ることができるように舞台のエプロンに這って行ったものさ。革命だった、「牧神の午後」と同じインパクトだったよ』（アレック・ワイルダー）
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