作詞：　ジョニー・マーサー　Johnny Mercer
作曲：　ヴィクター・シャーツィンガー Victor Schertzinger (1941)

僕の人生が終わる時に、
天使たちに、回想の中で
ときめいたものを聞かれたら、
そうしたらこう言うのさ、
僕は君を思い出すよ

　ジョニー・マーサーは I Remember You についてこう語っている 『 一気に書いたんだ、１０分くらいで、多めにいっても３０分さ。』 さらに付け加えて『これはジュディ・ガーランドのために書いたんだ。 僕はいつだって、まともに考えられなかったくらいガーランドにのぼせ上っていたんでこの歌を作ったのさ。』



　それは単なるの熱中以上のもので、フィリップ・フューリアが彼の伝記のなかで明らかにしている。 彼らはすくなくとも二回、長期で激しい恋愛関係にあり、 実際いくつかのマーサーの歌詞はガーランドを思って作られたものだという。 その中には That Old Black Magic, Skylark がありそれに I Remember You も含まれている。 彼らの関係が始まったのは 1941 年で、マーサーは既に結婚しており、 ガーランドは作曲家、指揮者のデイヴィッド・ローズと婚約していた。 ガーランドはローズと結婚し二人の関係を終わらせたものの、 彼女はマーサーの名曲に影響を与え続けてきた。

　1976 年にマーサーが亡くなった時に、彼の友人たちが妻のジンジャーに彼の墓碑銘は "I Remember You" がいいと提案したが彼女は激怒したという。 結局妻と彼の友人が選んだ死後出版における彼の選集には、 彼の最も重要な作品のひとつであるにも関わらず I Remember You は除外されていた。 皮肉なことに、1994年のジンジャーの追悼会での彼女の写真には "I Remember You" のキャプションが添えられていたという。

★1　この曲は、第二次世界大戦中に作られたミュージカル映画 The Fleet's in (1941) のために書かれたもので、 映画の中では、ドロシー・ラムーアが夜の砂浜で歌い、リプリーズではボブ・エバリー＆ヘレン・オコネルが、 ジミー・ドーシー楽団をバックに歌っている。
ジャズ・スタンダードとして、チェット・ベイカー、ダイアナ・クラール、フォア・フレッシュメン、ヘレン・メリル、 ジョー・パス、リー・コーニッツなどの歌手、演奏家が取り上げている。 (JazzStandards.com のランクは 116 位 につけている。

作曲のシャーツィンガーは、ヴァイオリン奏者、オーケストラ指揮者、ポピュラー音楽作曲家、映画監督と多才な人であった。 この映画の監督でもあるが、映画の完成後突然に亡くなった。
なおこの映画からは、ラテン風味のあるもう一つのスタンダード Tangerine が生まれているが、 Tangerine という言葉は ここでは柑橘類を意味するのではなく、マーサーが想像で作ったアルゼンチンの女性をさしている。

★2　二人の出会いは、1939年のあるパーティーでコール・ポーターの Friendship をデュエットしたことだという。 二人が恋愛関係になったのは、1940年頃と言われるがこの時マーサーは31歳、ガーランドは18歳だった。
彼の友人でもう一人の彼の伝記作家であるジーン・リーズに彼はこう語っている、 『僕はジュディに恋したんだ。彼女を最初に見たのは彼女が７歳の頃で母親の弾くピアノで姉妹たちと歌っていた。 彼女たちは黒っぽく野暮で時代遅れの服を着ていたけど、彼女が歌うと誰もが打ちのめされたんだ...』

1950年代初頭、焼け木杭に火がつくことになるが、 A Star Is Born のパーティーで、マーサーは 車の中で心臓発作で死んでいた彼女の母の事故に関しガーランドを非難した。 (彼はゴシップ記事で娘に見捨てられた母親のインタヴューや、新聞に書かれた母親の貢献と娘の冷淡さを信じたが、 娘にとっては彼女の母親は常に苦悩の元だったらしい。 真実は神のみぞ知ることだが、直情径行で古風な家族主義を信じるマーサーには新聞やゴシップ雑誌の記事 でジュディが許せなかったようだ）
彼女は泣き崩れ、バスルームで手首をカットし救急車が呼ばれるという事態になり恋愛関係は終了することとなった。

ジーン・リーズは 1943年に発表された One For My Baby はガーランドとの恋の追想を歌ったものだと広く考えられていると言い、 次のような歌詞の一部をあげている。

Could tell you a lot
but that's not
in a gentleman's code
いくらでも語れる
けどそれは
紳士のけじめだからね
（注：このパートの歌詞は２種類あるがこれは映画版の歌詞。
　歌われることは珍しいがフランク・シナトラはサンズでのライヴで歌っている）


(参考　America's Songs II 他)

2017/11/15 作成

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