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作詞:ジョニー・マーサー Johnny Mercer
[ヴァース]
[Verse]
作曲:デイヴィッド・ラクシン David Raksin
映画 Laura (1944, ローラ殺人事件)の主題曲として作曲され、映画公開後の 1945に歌詞がつけられた。
作曲家デイヴィッド・ラクシンは映画やテレビに何百ものスコアを書いたものの、最も知られている曲はある幻想的なメロディーである。
ラクシンが20世紀フォックスのフィルム・ノワールの名作「ローラ殺人事件」のスコアを書き終えた後、監督のオットー・プレミンジャーは彼にデューク・エリントンの Sophisticated Lady を映画に使いたいと言った。ラクシンは映画とは無関係だと抵抗したが、プレミンジャーは週末の猶予を与え、月曜日に気に入る曲を作ってこなかったら Sophisticated Lady を使うからと言った。
曲想が浮かばずにいたその週末の日曜日にラクシンは妻から別れたいとの手紙を受け取った。「僕は最後の気力も果ててしまったと感じ、それから・・・意図するでなく・・・ Laura と言われている曲の最初のフレーズを弾いていたんだ・・・」、という次第でローラの主題曲が完成し監督にも受け入れられることとなった。
映画公開後、インストルメンタルによる映画主題曲は映画ファンの間で人気曲となり、彼らは映画会社だけでなく監督や出演者にまで、歌詞をつけてほしいと手紙を出した。20世紀フォックスは先ず「オクラホマ」をヒットさせ「回転木馬」のプレミア上演を行ったばかりのオスカー・ハマースタインに歌詞作りをアプローチした(ハマースタインの方からのアプローチという記述もある)。しかし、ハマースタインが彼の出版社から曲を出すことを主張したので、大ヒットすることが予想できたもののロイヤリティーの問題でこの話は御破算になった。(ラクシンがリチャード・ロジャーズの作品となるのを嫌ったという資料もある)
次にアプローチしたのはアーヴィング・シーザーであった。彼はジャズ・エイジの 1920年代に Swanee や Tea for Two などの大ヒットを作った作詞家ではあったが、ポーター、ハート、アイラ・ガーシュインなどの洗練された作詞家の出現とともに人気が下降していった人で不可解な選択と言えた。ラクシンには彼が書いたメロディーの最初の2音は Lau-ra で始まるように書いていたつもりが、シーザーの歌詞は Two Dreams といったもので、『実用的』な歌詞ではあったがラクシンにはシーザーの歌詞は『実に不愉快』に思えた。
そこで映画会社がラクシンに好みの作詞家を確認したところ、面識はないもののジョニー・マーサーが彼のお気に入りの作詞家だと答えたので、マーサーの知り合いの音楽家を通し「デイヴ・ラクシンが君に会いたがっている。国中の多くの人が歌となるのを望んでいる・・・」といった電報を送った。もちろんマーサーには3番目に選ばれた作詞家ということは伏せておいたが。
マーサーはラクシンと会い彼からメロディーを受け取ると、いつものようにその場を去り一人で仕事にとりかかった(★1)。マーサーはラクシンの入り組んだメロディーのとりこになり数日後にラクシンに歌詞を渡すことが出来た。ラクシンがマーサーの歌詞を書き替えたという人もいたが、これはラクシンによると、2ヵ所だけマーサーは言葉の選択に迷ったところがあり、ラクシンに言葉の選択を任せたからだという。更にマーサーの助言に従いラクシンは急いでヴァースのメロディーを書き上げ、歌が完成することとなった。(ティン・パン・アリーの流儀に倣いヴァースは加えられたものの、多くのティン・パン・アリー流行歌同様、ヴァースはほとんど歌われることがなかった)
ラクシンは「ジョニーの成果には驚いたよ。彼は気持ちを込めて歌詞を作り、血や汗のにじむような努力できつい仕事だったに違いないけど、彼は誰にもそれを気づかせないのさ。彼は髪を乱すこともなく、指先をさっと動かして書いたように思わせたかったみたいだったよ」と称賛した。
マーサーは自身の努力を否定していない。「もし誰かが何かのサウンドをもったメロディーを弾いたのなら、僕はそのサウンドに合わせた言葉を書くんだ。僕がそのムードを捉えることが出来たのならね。ローラは映画の曲で、その映画がミステリーということなので、僕はあらかじめ神秘的なテーマの歌にしようと決めていたんだ」と。更に彼は、少ない音符数、タフな音程、奇抜なキー・チェンジに歌詞を合わせる難しさにも言及している。
ある感覚
半分思い出せるのに、
決して起きたことがなく
でもとてもよく思い起こせること。
ある感覚
誰か分かるのに
決して会ったはずのない人、
君が知っている限りでは。
まあ、
[リフレイン]
ローラ
薄明りに浮かぶ顔、
足音
階下から聞こえてくる、
笑い声
夏の夜にただよう、
それは不鮮明でしかない
思い出。
そしてローラを見たのは
通り過ぎる列車の上から、
あの瞳の、
何とも懐かしいこと!
彼女がくれた
最初のくちづけを。
あれはローラだった、
でも彼女はただの夢。
You know the feeling
Of something half-remembered,
Of something that never happened,
Yet you recall it well.
You know the feeling
Of recognizing someone
That you've never met,
As far as you could tell.
Well—
[Refrain]
Laura
Is the face in the misty light
Footsteps
That you hear down the hall,
The laugh
That floats on a summer night
That you can never quite
Recall.
And you see Laura
On the train that is passing through,
Those eyes,
How familiar they seem!
She gave
Your very first kiss to you.
That was Laura,
But she's only a dream.

補足
★1: 一部の例外を除いて、ジョニー・マーサーは大抵の場合、作曲家がピアノを弾いている脇で作詞をすることがなく、メロディーを受け取ると、一人きりになり歌詞作りに没頭するスタイルだった。また彼は与えられたメロディーに複数の歌詞を書き、作曲家に選ばせるということもよくやったようだ。
マーサーは歌のタイトルを Footsteps in the Dark としたかったようだがこれは受け入れられなかったようだ。
★2: バート・レイノルズ監督・主演の映画「シャーキーズ・マシン」(Sharkey's Machine, 1981) でもショットガンで撃たれた女性に恋する刑事というシーンがあり、ヒロインの存在感は異なるが元の映画を暗示させられる。
なお、「ローラ殺人事件」のラスト近くのクライマックス・シーンでラジオから詩の朗読が聞かれるが、これはアーネスト・ダウソン(Earnest Dowson) の詩 Brief Life. 偶然かどうか不明だがこの詩のフレーズを引用した映画 Days of Wine and Roses が1962年に作られジョニー・マーサーは前年に続きアカデミー主題歌賞を受賞することになった。
参考資料
・America's Songs (Philip Furia & Michael Lasser)
・Skylarks (Philip Furia )
・Portrait of Johnny (Gene Lees)
・The Complete Lyrics of Johnny Mercer
・ジャズ詩大全 vol. 9 他
・You Tube 検索
・映画 Laura
2016/06/10 作成
2026/07/25 歌詞訳ヴァース追加 等