歌の逸話1 : ジェローム・カーンお気に入り２曲
 The Song Is You
 I've Told Ev'ry Little Star


ジェローム・カーンとオスカー・ハマースタインはヨーロッパを舞台としたオペレッタ Music In The Air (1932) で卓越した 2 曲を書いたが、いずれもカーンのお気に入りであった。

The Song Is You : カーンの I Hear Music
The Song Is You はカーンが個人的にはお気に入りの歌であったが、彼はいつもこの曲を I Hear Music と呼んでいた。カーンは曲を書き上げた直後ハマースタインに聞かせたが、カーンのまばゆいばかりのハーモニーと劇的なメロディーは、聞き手を時にはささやき声さえさせず、時には夢の極みに高揚させた。
この激しくもロマンティックなバラードは、舞台上では二人の上品とは言い難い男女が出会い男が女を口説くコミック・シーンで使われた。リハーサルを見たアーサー・シュワルツは『なぜこんな感動的なメロディーの曲を、男が女を愛撫しながら歌うような見たくもない場面のために犠牲にするのですか？』と聞いたが、カーンはこの質問にはまともに答えず、『場面が求めている』とだけ言ったという。

I've Told Ev'ry Little Star : 鳥が作曲を手助けし歌詞作りを邪魔した歌
まるで安っぽい映画のような話だが、カーンのトリルするようなメロディー I've Told Ev'ry Little Star は実際のところ鳥の歌声からひらめいたものという。カーンがナンタケット島を訪問したときのこと、彼を起こした鳥がいた。その鳥が飛び立った後にカーンは鳥の歌をまねて歌った後に眠りに戻った。その朝の遅くになると彼はそのメロディーを思い出せなくなってしまった。幸運なことに翌早朝にその鳥は約束されたかのように再び訪れ鳥の鳴き声を聞いた。彼は索引カードにメロディーを記し、鳥が飛び去るとカードの下部に 『午前６時、東窓にて柳の木の鳥の歌声。 J.K. 』 と記した。後にカーンは 『それは完結したフレーズであり、全く文句のつけようもないメロディーだった』 と回想している。文字どおりにはカーンは完全に鳥の鳴き声を再現したものではないが、しかしその鳴き声の主旋律を基に曲を書き上げたものである。
カーンとは異なり、ハマースタインは特別の手助けが得られることはなかった。メロディーの軽快さにもかかわらず、歌詞を書きあげることは非常に困難なものだった。後にハマースタインは 『８月の暑い日が続く期間で、私は燕にその大口を閉じて黙っていて欲しいと願っていた』 とこの時の不満を思い起こしている。

14年後の 1945 年 11 月 5 日、ジェローム・カーンはニューヨークの歩道で倒れた。ハマースタインはカーンが亡くなる 11 月 11 日まで病床にある友人の傍らで夜も付き添った。ハマースタインはジェリー（カーン）が I've Told Ev'ry Little Star を好きだったことを思い出し、酸素テントを持ち上げ彼の耳元でささやくように歌ったが、歌い終わった後にカーンの反応がないことを知りハマースタインは涙を流し始めたという。


参考資料：　America's Songs

2013/08/15 作成

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