OF THEE I SING
& LOVE IS SWEEPING THE COUNTRY & MINE

ガーシュイン兄弟によるヒットミュージカル Of Thee I Sing から２曲＋１曲。

1. Of Thee I Sing
2. Love Is Sweeping the Country
3. プロットおよび解説
4. Mine (from "Let 'em Eat Cake", 1933)

OF THEE I SING (, BABY)

［ヴァース]
マンハッタン島から金の海岸まで、
北から南まで、東から西まで、
君は私が最も愛する恋人だ。
君は今まで語られた中で最も愛らしい夢の少女だ；
昼も夜も探してきた夢
アメリカ中を何年もかけて
大きな望みを抱いてきた星は
まさに君だ。

［リフレイン］
そなたをわれ歌おう、ベイビー　―
夏、秋、冬、春も、ベイビー。
君は我が輝く雲の縁（希望の兆し）、
君は我が晴れたる青空、
愛の光が見えている
それは君ゆえに。

そなたをわれ歌おう、ベイビー　―
君には何かがあるのさ、ベイビー！
輝ける星そして神の啓示は、
強国に値する人　―
そなたをわれ歌おう！

※　歌の背景およびタイトルフレーズに関してはプロットおよび解説を参照

LOVE IS SWEEPING THE COUNTRY

［ヴァース］
人々は何故陽気にしているのか
夜も昼もいつでも、
今までにない感じで？
何が彼らを
歌わせているのか？

金持ちも、貧乏人も、泥棒も、
医者も、弁護士も、班長も、
無視できない気分を感じている；
その役割は
みんなの心の中にあるもの、
そしてみなの心が叫ぶのは『アンコール！』

［リフレイン］
愛がこの国に満ち溢れようとしている；
波は海岸を抱き締め祝福している；
性別に関係なく
メインからテキサスまで
そんな愛を今まで知らなかった。

見上げてごらん嘴を交わしたり
ささやき合っている小鳥たちを！
女の子も男の子も同じように、
喜びを同じように分かち合っている、
その情熱は
すぐに国民性となると感じるだろう。
愛がこの国に満ち溢れようとしている　―
こんなにも多くの愛が満ちたことなどない位に！

※　この後に東洋風のメロディーを伴ったパターソングが続くが聞いたことがないので訳さなかった。 sweep は「掃く」を意味するがここでは「ある場所に広く瞬く間に影響が及ぶこと」を意味している。

プロットおよび解説

第一幕
1930年代初頭の大統領選集会で幕は開く。ナショナル党はジョン・ウィンターグリーンを大統領候補、スロットルボトムを副大統領候補として推すが、選挙参謀の気は重い。民衆の党への信頼が低いからであった。
新聞記者のマシュー・フルトンは「何であれ誰もが興味あるような」ことを党の公約として採用するよう提案する。公約を決めようとしていた時、ホテルでの客室係のメードに今興味のあるものはと聞いたら彼女は「愛」と答える。党は公約を「愛」に決め、宣伝のため党はニュージャージー州アトランティック・シティで開かれる美人コンテストのスポンサーとなりウィンターグリーン候補はその勝者と結婚すると宣言してしまう。

アトランティック・シティの海岸遊歩道で開かれる水着美人コンテスト・・・ミス・ホワイトハウス・・・が全国の州から集まった美女たちの間で競われる。審査員であるウィンターグリーン候補は、知らない女性と結婚することに気が滅入ってくるが、コンテストを取り仕切っていたメアリー・ターナーを信頼するようになり、美人でなく家庭的な彼女に恋をしプロポーズする。美人コンテストの勝者はダイアナ・ドゥヴェローだったが彼女が現われるのが遅すぎた。ウィンターグリーン候補の心はコーンがなくともコーン・マフィンが作れるメアリー・ターナーに捧げられたからだ。コーン・マフィンをふるまわれた審査員もウィンターグリーンの意見に同調する。

ナショナル党の参謀ジェンキンズとミス・ベンソンは愛は『国中に愛が満ち溢れる』 (Love is sweeping the country) とキャンペーンする。ジョン・ウィンターグリーンとメアリー・ターナーは各州（４８州）で求婚と彼女の受け入れを再現し『そなたをわれ歌おう』 (Of Thee I Sing)と歌う。選挙はウィンターグリーンの圧倒的勝利に終わる。

当然のようにジョンとメリーの結婚式は大統領就任式の日に行われる。二人が誓いを交わそうとした時にダイアナが現われ契約不履行に関する召喚状を手渡すものの、最高裁判所でさえ、コーン・マフィンは有効だとして彼女の告訴を無視しようとする。

第二幕
一か月が過ぎ政治体制も安定してきた。大統領の差し迫った日程は競馬に賭ける馬を決めることであった。しかしダイアナは彼女寄りの同情を集めるように、彼女の悲劇を国中に振れ回っていた。大統領は記者会見を開き、メアリーへの愛が本当に大事なものだと宣言する（Who Cares?)
しかし、フランス大使が来てダイアナの申し立てに加わると言う。ドゥヴェローというフランス系の名前のダイアナは「ナポレオンの私生児の甥のその私生児の息子のそのまた私生児の娘」であると抗議する。大統領とメアリーの結婚は無効にし、約束通りダイアナと結婚するように大使は主張する。大統領は拒否するが、ナショナル党は彼を解任をすると脅す。

上院で弾劾裁判が行われている間、副大統領スロットルボトムは大統領の役目を果たすと宣言する。フランス大使の証言に続きダイアナは耐え忍んできた苦痛を語る。解任の宣言がされようとするとメアリーが現われ『私は母になろうとしている、これ以上言うことはあるかしら』(Who Could Ask for Anything More? (I Got Rhythm の有名なフレーズをガーシュイン兄弟は再利用している）)、と議会で証言する。米国は決して父になろうとしている男を解任したりはしないので、大統領への告発は取り下げられることになる。

数ヵ月後アメリカ中は子供の到来を待ちわびていた。メアリーが双子を出産するとホワイトハウスは喜びに沸きかえる。しかしフランス大使は自分の主張が無視されたことを忘れることはなかった。大統領は、彼が執務に就けない時は副大統領スロットルボトムが大統領の職務に就くという理由づけをして、ダイアナと結婚するようにスロットルボトムを説得するが彼は喜んでその提案を承諾し、フランス大使も納得する。

解説：　ミュージカル・コメディというよりもギルバート＆サリヴァンのコミック・オペラのスタイルになった 1931 年の舞台作品は、 1930 年代で３番目に多い上演回数を記録し、更にミュージカルとしては初めて演劇部門のピューリッツァー賞に輝いた作品であった。このミュージカルから、ここに載せた２曲以外にもアニタ・オディなども録音した Who Cares も評判となった。
1933年５月には再公演が行われ、同年10月には続編とも言える風刺ミュージカル Let 'em Eat Cake をほぼ同じ主要キャストで上演したが、大統領の独裁に対する風刺が辛辣すぎ、テーマが誤解されやすかったため３カ月しか続かず失敗作となったが、唯一のヒット曲 Mine は、1952年の Of Thee I Sing の再演に追加された。

舞台タイトルの Of Thee I Sing というフレーズはアメリカ国歌 The Star-Spangled Banner 制定以前の実質的国歌であった America (My Country, 'Tis of Thee) という愛国歌の中のワンフレーズで古語を使った堅苦しい言葉。（以下に歌詞の一部を載せるが、最近ではオバマ大統領の絵本『きみたちにおくるうた――むすめたちへの手紙』にもこのフレーズが使われている）

America (My Country, 'Tis of Thee)

（１番だけ）

My country, 'tis of thee,
Sweet land of liberty,
　　Of thee I sing;

Land where my fathers died,
Land of the pilgrims' pride,
From ev'ry mountainside
Let freedom ring!

我が国、そなたなり、
喜ばしき自由の地、
　　そなたをわれ歌おう；

我が父たちが骨をうずめた地、
彼ら移住者たちの誇りの地、
あらゆる山腹から
さあ響き渡れ自由よ！

ところで愛国的なフレーズに、恋人への呼びかけに使う口語的な baby を付け Of thee I sing, baby... と歌い出すタイトル曲は（時に baby が曲名に付けられる場合もある）、アイラ・ガーシュインによると上演前、厳格な言葉を茶化すような歌詞が観客の非難を浴びるかもしれないとの配慮から台本・演出のコーフマンは反対したという。そこで、非難が大きければ他の曲に変えようと準備していたが、しかし初日、そして数週間後も幕間にロビーから "Of thee I sing, baby" と歌う声が聞こえたことで観客から受け入れられたことが分かり一安心したという。

参考資料：
●　wikipedia
●　The Guide to Musical Theatre
●　書籍「ジャズ詩大全　第７巻」
●　書籍「ブロードウェイミュージカルのすべて」

MINE (from "Let 'Em Eat Cake")

［ヴァース]
ウィンターグリーン
　　良き友よ、私を称賛しないでくれ！
　　私はこの可愛い女性のおかげなのだ、
　　この可愛い女性、我が可愛い女性に。
　　彼女が私の成功の理由なのだ。
　　何故なら、私が思うのはあの時のこと、二人で苦難を受け　―
　　二人して悩み、二人して苦労し、
　　二人して団結した時のことを。
　　私はとても感傷的になり、
　　歌い出してしまいそうになるんだ。
アンサンブル
　　どうぞ歌って下さい！
　　我々はあなたがどのように彼女を思っているか、
　　そして彼女があなたをどう思っているか知りたいのです。

［リフレイン］
ウィンターグリーン
　　私のもの、愛は私のもの、
　　雨が降ろうと、嵐だろうと、日が照っていようと、
　　私のもの、君は私のもの、
　　決して他の恋人(valentine) などはいない。
　　そして私は君のもの、
　　私は君のものだと言っておくれ；
　　我が敬愛するあの微笑みを見せておくれ。
　　私のもの、神々しさ以上の気持ち
　　君の愛が僕のものと知る喜びは！

［パター］（カウンターメロディー）
アンサンブル
　　彼らが気持ちを歌に託すことは、
　　彼らが仲良くやっていく以上のものがある；
　　彼は恥ずかしがらずに言える
　　彼女は彼の今日の気持ちを言わせられる。
　　人を快適にさせる
　　あんな幸せな家庭生活を見れば；
　　彼らの愛を見たのなら、君らはきっと
　　二人は結婚していないって言い張るだろうね。
　　彼は言うのさ、何が起ころうと、
　　彼女が彼のものである限りって具合にね；
　　つまり彼女が作る歌の要点は　―
　　彼女のものは彼のものだってことさ。

ウィンターグリーン＆アンサンブル
（リフレインとパターは同時進行し、最後は次の歌で終える）
　　私のもの、神々しさ以上の気持ち
　　君の愛が僕のものと知る喜びは！

※　Of Thee I Sing の Who Cares? と同内容の歌で、ウィンターグリーン大統領の２期目の選挙において政府を打倒しようとする青シャツ党を打ち負かした後に、彼の支持者とファースト・レディのメアリーとともに歌う。フィナーレ付近のリプリーズでは、ウィンターグリーンとメアリーのデュエットで歌われる
mine と韻を踏む言葉は、shine, valentine, divine などだが、valentine は小文字でこの言葉は人名でなく「恋人」を意味する。
パターは、ウィンターグリーンがリフレインを歌っている時にアンサンブルが同時に観客に向かって歌う。フォア・フレッシュメンはパターは歌っていないが、ジャッキー＆ロイは、ジャッキーがソロでリフレインを歌った後に、ロイと二人でパターとリフレインを交互に歌っている。

作詞：アイラ･ガーシュイン Ira Gershwin
作曲：ジョージ･ガーシュイン George Gershwin
舞台ミュージカル Of Thee I Sing (1931)
および　Let 'em Eat Cake (1933)

レコード、ＣＤ
Of Thee I Sing, Baby
●　クリス・コナー Chris Connor sings the George Gershwin almanac of song (Atlantic)
●　ハイ・ローズ The Hi-Lo's : And all that Jazz (CBS)

Love Is Sweeping the Country
●　クリス・コナー Chris Connor sings the George Gershwin almanac of song (Atlantic)
●　ジャッキー＆ロイ Jackie & Roy : The Glory of Love (ABC)

Mine
●　フォア・フレッシュメン The Four Freshmen : Voices in Latin (Capitol)
●　ジャッキー＆ロイ Jackie & Roy : On Stryville (Storyville) & High Standards (Concord)

2011/09/15 訳
2013/03/01 レイアウト変更等