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COULD YOU USE ME? and other songs
from the musical "Girl Crazy"

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But Not For Me, Embraceable You, I Got Rhythm, Bidin' My Time などのスタンダード を生んだ 1930年のブロードウエイミュージカル GIRL CRAZY から、比較的知られていない次の４曲を訳した。

1. Could You Use Me？
2. Treat Me Rough
3. Boy! What Love Has Done to Me!
4. Sam and Delilah

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COULD YOU USE ME?

［ヴァース１]
ダニー：ちょっとは東部人に同情してよ；
　　　　少しくらい憐れみを見せてもいいだろ。
　　　　誰もそんなに容赦なくないよ
　　　　君が僕にした態度ほどには。
　　　　僕が申し込みたい仕事というと――
　　　　説明してみるよ：
　　　　望むのは共同経営――
　　　　僕らが夫婦ってことさ！
　　　　君がこの提案を棚上げするまえに、
　　　　僕自身のことを説明させてよ：


［リフレイン１］
　　　　そう、僕って奴は
　　　　君を幸せにするんだ：
　　　　君のあんよの靴紐を結ぶし、
　　　　君のもやもやも払うさ：
　　　　お嬢さん、どうかお願いです――
　　　　ねえ、言っておくれ、
　　　　僕を利用して見ようかなって。

　　　　玄関マットの埃は払うし
　　　　猫も追い出すよ。
　　　　屋根裏も掃除するし、
　　　　オウムの餌やりもするよ。
　　　　お嬢さん、どうかお願いです――
　　　　ねえ、言っておくれ、
　　　　僕を利用して見ようかなって。

　　　　なんていい人なんだって思うようになり
　　　　僕を受け入れて来たよね？
　　　　僕は慈善会や秘密結社や友愛会の会員のように　（★）
　　　　３時に帰宅するような男じゃないんだ。

　　　　僕を見る女の子たちは
　　　　優しく夢見るようになるもの。
　　　　でも僕はまぬけな堅物で
　　　　恋をあさるような奴じゃないんだ。
　　　　ねえ、僕を利用してみたらどう？
　　　　だって、僕はとても君が必要だから。

［ヴァース２］
モリー：私の知っているメキシコの男は、
　　　　とても強い男で；
　　　　釘を喰らい石油をガブ飲み――
　　　　それが私好みの男よ。
　　　　カリフォルニアにいる男は
　　　　あんたよりずっとロマンティック。　
　　　　彼がセクシーに『黒い瞳』を歌うと　（★★）
　　　　彼は本気なのかとよく思ってしまうの。
　　　　でもあんたのことに関しては、おっさん、残念ながら、
　　　　合格はないでしょうね。

［リフレイン２］
　　　　だってあんたはカウボーイじゃないし；
　　　　あんたは軟弱！　それにまあ！　なんとも！
　　　　筋肉なんてないじゃない
　　　　取っ組み合いに必要な筋肉が。
　　　　お断りします：
　　　　あなたを使う気はありません。
ダニー：失敬な！
モリー：あんたと夜を過ごすなんてないわ、
　　　　鳥だってあんたにうんざりするし、
　　　　牛はあなたを無視するだろうし、
　　　　馬はあんたを放り投げるでしょうね――
　　　　おバカさん、
　　　　聞いたわね
　　　　『僕を利用できるかな？』って

　　　　愛に関してはあんたは凄腕かもしれないけど、
　　　　知りたいものね、
　　　　私を吹雪の中で温められるかしら？
　　　　そうね零下４０度の中で。　（★★★）

　　　　あんたのネクタイはケバケバしいし、
　　　　ひざはヨレヨレしいし、
　　　　小娘たちがいる所に帰りなさいよ！
　　　　ハイボールを飲む大酒飲みたちがいる所へ！
　　　　あんたが私を必要としていても、
　　　　本当に私はあんたなんて必要ないのよ！

※　男女掛けあいの軽快なデュエットソング。

ニューヨークからアリゾナの田舎に来たプレイボーイのダニーはそこで会った女性郵便局員モリーに言い寄るも、彼女はなよなよした男は嫌いとばかりに撥ねつける。この時の歌はしかし、物語が展開すると互いを求め合い、バラード『エンブレイサブル・ユー』のデュエットに変わる。

舞台ではアレン・カーンズと２度目のブロードウェイ出演となるジンジャー・ロジャーズが歌った。1943の映画化ではモリー・グレイという役名をジンジャー・グレイに変えたジュディ・ガーランドとダニー役のミッキー・ルーニーが歌った。（映画ではストーリーを多少変えてあり、ガーランドは脇役として劇中ショーで歌ったエセル・マーマンの当たり曲 I Got Rhythm 、ジンジャー・ロジャーズの Embraceable You, But Not for Me 、カウボーイ４人組ののんびりソング Bidin' My Time など、このミュージカルの当たり曲全てを歌っている）

ジャッキー＆ロイの夫婦デュオのフェヴァリットで、二人は少なくとも３回この歌を録音している。


★　原文は I'm no Elk or Mason or Woodman でそれぞれ友愛会 fraternity の会員名のこと。それぞれの組織名は次のとおり
Elk は Benevolent and Protective Order of Elks　エルクス慈善保護会
Mason は Freemasonry　フリーメイソン
Woodman は Woodmen of the World　ウッドメン友愛会

★★　原文は、When he sings "Ha-Cha-Cha-Chornia"
Ha-cha-cha は hotcha とも書くが俗語でセクシーなという意味がある。
これとロシア民謡『黒い瞳』 ("Cha Chornia" or "Otchi Tchorniya") を合成したものか？

★★★　 英歌詞は "Say forty below" で forty below とは「40度以下」とも「零下40度」とも解釈できるが、例えば the temperature is 20 below　というと「零下20度」を意味すると辞書の用例にはあり、歌のコンテキストから「極寒の中でも私を温めてくれるの？」といった意味合いに感じれたので『零下４０度』と訳した。なおアメリカの歌詞なのでこの温度は華氏－４０度のことで摂氏に換算すると約－４０℃となる。（もし「華氏４０度以下」という意味ならば「摂氏約４度以下」と換算出来る）
forty below という言葉はよく使われるフレーズなのだろうか？ Baltimore Oriole (w. P.F. Webster m. H. Carmichael) にも "Took a look at the mercury, forty below" という歌詞が見られ、またインターネットで調べると Forty Below という極寒仕様の登山用具メーカーも見られた。

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TREAT ME ROUGH

［ヴァース］
僕が生まれた時に、僕の口には銀のスプーンがあったんだって；
（注：金持ちに生まれるというイディオム）
僕には髪の毛をカールするだけの理容師がいたほど。
もし冬が来れば、母親は僕を南部に連れて行ったよ。
つまり僕は最高のもてなしを受けてきたってことさ。
女たちもボーイ長たちも僕にかしずいてきたんだ：
僕の夜明けが来るまでは人生はただ退屈だったよ。
つまりは僕が男の中の男でいたかったら、
時には僕を乱暴に扱って欲しいってことさ。
だから、

［リフレイン］
僕を手荒く扱っておくれ、
髪をぐちゃぐちゃにしてよ、
気遣いながらも
　おそるおそる乱暴なんてのはなしだよ。
僕は無邪気なお馬鹿な坊っちゃんじゃないんだ、ベイビー。
僕を粗野で野生的にしておくれ。
僕を手荒く扱っておくれ。
頬っぺたをつねっておくれ、
キスして腕をまわしてギュッと抱き締めてるんだ、
僕が弱弱しくなるまで。
僕は十分甘やかされてきたから、ベイビー
ずっと手荒く扱い続けておくれよ。

※　舞台ではウィリアム・ケント（男）が歌った。1943年の映画化では、ジューン・アリソンがトミー・ドーシー楽団をバックに歌った。

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BOY! WHAT LOVE HAS DONE TO ME!

［ヴァース］
金門海峡の地の出来事；
ケイトという馬鹿な娘がいた：
その地についた彼女は連れ合いを見つけた
それからいつまでも不幸せになったとさ。
彼女は大金持ちを選べたのに、
自分自身を駄目にしてしまったのは
スリックという名の男を選んだから。
彼女は彼をとても愛してしまったアホ娘；
彼女の悲嘆の物語を聞いてみようじゃないか：

［リフレイン１］
私は彼の室内履きを用意して、
彼のパイプに葉っぱを詰める；
ニシンを料理し、
彼のお決まりの冗談に笑う；
でもここが私が錨をおろす場所なの――
銀行家を夫にすることもできたのに――
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

彼の天性はいかれた奴――
しょっちゅう喧嘩腰；
それに金に関しては、
彼は一文無し。
そしてここにいる馬鹿女：
私は株式仲買人を夫にすることもできたのに。
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

男性が私の生き方を見てしまったら、
彼は自信を得るかしら？
まあ、彼は劇的になるでしょうね。
私は飛び出して行きたいけど、
彼から去った私は大海原のまっただ中でうろたえるはず。

私は奴隷みたい；
人生はおかしなもの。
彼はうまい汁を吸い、
私が得たのはこの結婚指輪。
でも彼を今でも愛している、
彼以上の人はいないの！
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

［リフレイン２］
彼の頭脳はマイナス、
答えに近づいたことさえない。
なのに殿下様ときたら
夜も昼も私にご講義くださる。
なんと彼との結婚許可証に
サインする私のセンスときたらなんなの？
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

私の人生は彼がめちゃくちゃにしてくれた；
彼が今どこに居るかあてましょうか、
外でどこかの婦人と
ネッキングしているはず。
人生というものを知るのは、
最低の結婚生活を送ったとき――
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

私は誰にも顔向けできない：
肉屋もパン屋も
みな知っているのは彼はペテン師。
もうやだ、うんざりよ――
でも彼から去ったら彼は木の上で途方にくれるはず。

どこで終わりにしたらいいの？
自分がどこに居るのかさえ分からない。
決断して
彼のアパートを出て行かなけりゃ。
でもだんだんと
あの汚い奴への愛が深まってしまった。
あーあ！　愛の報いがこんなだとは！

※　ろくでなしに惚れた女の不満半分、惚気半分のコミック風バラード。ある本には、この女性は Can't Help Lovin' Dat Man 症候群が見られるとある。

人里はなれたアリゾナの田舎で、父親から牧場の経営を命令された東部のプレイボーイのダニーは町で唯一のホテルでショーを企画し成功する。
I Got Rhythm, Sam and Delilah, Boy! What Love Has Done To Me の３曲は、この劇中のショーで大当たりをとるフリスコ・ケイトという役を演じたこれがデビュー作となるエセル・マーマンのために書かれた曲。
Sam... と Boy... は大して話題にならなかったが I Got Rhythm のセカンドコーラスで１６小節に渡ってハイノートを出し続け、マーマンは観客を捉えてしまう。それまで週給３５ドルの秘書だった彼女は、以来週給３５０ドルの大スターになり、生涯にわたり彼女のテーマ曲となり、またこの曲はスゥイング～ビーバップ時代、ジャズの恰好なアドリブ素材として使われ How High the Moon がミュージシャンたちに Moon と略されたように Rhythm と言えばこの曲を指すほどのジャズスタンダードとなった。

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SAM AND DELILAH

ケイト　：デライラは娼婦；
　　　　　悪たれをついたことなどない。
　　　　　デライラは人を選別することなどなかった
　　　　　とはいえ彼女が恋に落ちるまでのこと
　　　　　あるしゃれ男に会うまで
　　　　　牛追いで名前はサム。

　　　　　デライラは実行に移った；
　　　　　デライラはクーチを踊り、（★）
　　　　　彼を満足させた、
　　　　　そして彼は落ちた
　　　　　彼女の魔法に
　　　　　愛とフーチ酒でもって。　（★）
　
　　　　　でもある日 ― 伝えられる所では ―
　　　　　彼の本当の奥さんを彼は切望してしまった。
　　　　　デライラは嫉妬心を起こしてしまい
　　　　　彼を追っかけ
　　　　　彼をたたき切り
　　　　　それからサムの墓穴を掘ったとさ。

　　　　　情熱の行きつく姿はいつもこんな具合、
　　　　　だから、カウボーイよ、行儀よくふるまうのね、
　　　　　そうしなければ、あんたは殺され
　　　　　墓石もなく埋められてしまうこと確実。

コーラス：デライラ、ああ、デライラ
　　　　　森には彼女の恋人はいない；
　　　　　走って、カウボーイ、遠くまで逃げるの！
　　　　　もしそんな
　　　　　女性を愛してしまったら、。
　　　　　あなたに災難が降りかかるでしょう！

ケイト　：シェリフはデライラを捕まえた。
　　　　　民衆は木に彼女を吊るした。
　　　　　記録が残されている。
　　　　　これは悲惨―
　　　　　でも得られる教訓は
　　　　　はっきりしている。

　　　　　情熱の行きつく姿はいつもこんな具合、
　　　　　だから、カウボーイよ、行儀よくふるまうのね、
　　　　　そうしなければ、あんたは殺され
　　　　　墓石もなく埋められてしまうこと確実。

コーラス：デライラ、ああ、デライラ
　　　　　森には彼女の恋人はいない；
　　　　　走って、カウボーイ、遠くまで逃げるの！
　　　　　もしそんな
　　　　　女性を愛してしまったら、。
　　　　　あなたに災難が降りかかるでしょう！

※　アメリカ民謡 Frankie and Johnny と似た内容のブルージーなバラード。人名は映画化もされた旧約聖書士師記にある「サムソンとデリラ」を借用したのだろう。デューク・エリントン、リー・ワイリーが録音しているが殆ど忘れられた歌。

★　『フーチ Hooch もクーチ Kootch も1890年代に英語として取り入れられた言葉。 Hooch はウィスキーのことで、おそらくはアラスカのクロンダイクの Hoochinoo インディアンの酩酊性のある飲み物から来ている。 Kootch は hootchy-kootchy から来ており、大胆な東洋のベリーダンスのこと。1893年のシカゴ世界博覧会で悪評を得た。』
(from Lyrics on Several Occasions by IRA GERSHWIN)

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作詞： アイラ･ガーシュイン Ira Gershwin
作曲： ジョージ･ガーシュイン George Gershwin
舞台ミュージカル Girl Crazy (1930) より
(Girl Crazy を大幅に書き直した 1992 のミュージカル Crazy for You では、Bidin' My Time, Could You Use Me が使われている）

レコード、ＣＤ、YouTube
Could You Use Me
●バディ・クラーク Buddy Clark : Once and For Always(Jass record)
●ジャッキー＆ロイ Jackie and Roy : By Jupitor/Girl Crazy (Roulette); The Glory of Love (ABC); Double Take (Columbia)
●ジュディ・ガーランド Judy Garland & Mickey Rooney : ハリウッド玉手箱（MCA)
●Original Broadway Cast "Crazy for You"
■映画 Girl Crazy のシーン

Treat Me Rough
●ベティ・ベネット Betty Bennett : Nobody Else But Me (Atlantic)
●ジャッキー＆ロイ Jackie and Roy : By Jupitor/Girl Crazy (Roulette)
●ミッツィ・ゲイナー Mitzi Gaynor : Sings the Lyrics of Ira Gershwin (Verve)

Boy! What Love Has Done to Me
●ジョイス・ブリーチ Joyce Breach : Confessions (Audiophile)
■エラ・フィッツジェラルド

Sam and Delilah
●リー・ワイリー Lee Wiley sings Gershiwn and Porter (Liberty, Audiophile)

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2011/06/04 訳
2013/03/01 レイアウト変更等

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