今回は1929年のミュージカル映画 Sunny Side Up から、３曲を紹介する。

I'M A DREAMER (AREN'T WE ALL)

[ヴァース]
私たち誰だって
幸せを求めているよね？
人それぞれに違いはあるみたい
ある人は富を、
ある人は健康を、
ある人は愛がもたらすものだけを。
お願いだから馬鹿にしないで
私が人間らしい間違いをしたとしても、
私はあなたや、あなたや、あなたと同じなだけよ。


[リフレイン]
私は夢見る人、私たち誰でもそうよね？
ただの夢見る人、私たち誰でもそうよね？
毎晩私の夢の中に
恋人が立ち寄るの。
彼はとてもチャーミングで、強くて背高のっぽさん、
驚きよね、こんな風に恋に落ちるなんて、
彼は理想の人、でも存在しないのだからしょうがないわね、
そう私は愚か者だけど、でも私たち誰でもそうでしょ？


[ヴァース２]
私たち誰だって
いつも振る舞っているでしょ？
なりたい自分になったように。
幸運の女神がすぐここに隠れていて、
そして本当のことと想像するでしょ。

時々私は現実世界から目をそむけ、
それを心の片隅に隠しておいてしまうの。


（リフレインへ）

(KEEP YOUR) SUNNY SIDE UP

あんたの明るい面を見せ続けるのよ、さあ！
暗い面は隠しておいて。
もしあんたに連続して９人の息子があれば、
野球チームで稼げるわ、でしょ！

あんたの明るい面を見せるのよ、さあ！
笑い通すのよ、そうしなさいよ
二つの脚で立つのよ。
目玉焼きみたいに、
あんたの明るい面を見せ続けるのよ！


IF I HAD A TALKING PICTURE OF YOU

[ヴァース１]
毎日君の写真に話しかけるんだ、
僕が語る素敵な事が聞けるよ。
でもどんなに幸せだろうって思っているんだ
君の写真が僕に話しかけることが出来たのなら。

[リフレイン]
君のトーキー映画を持っていたんなら、
気分が憂鬱になる度に上映するのさ。
僕は暗がりに座り
僕の寂しい小部屋で、
そして君がこう言う度に喝采するのさ、『アイ・ラヴ・ユー』
『ラヴ・ユー』と
スクリーンで君が姿を現すと、
僕らは何でも話し合うのさ、僕ら二人で、
僕は一日１０回は上映するさ、
それに深夜興行も、
もし僕が君のトーキー映画を持っていれば。


※ 映画 Sunny Side Up と曲紹介
1927年に最初のトーキーと言われる「ジャズ・シンガー」が上映されるが、その２年後に映画各社はこぞってフル・トーキーのミュージカルを作る。（1926年の無声映画にクラシック音楽をつけた「ドン・ファン」を史上初とする意見もあるが）

フォックス社も時流に乗り遅れまいと、1920年代の人気ソングライタートリオのデシルヴァ、ブラウン、ヘンダーソンをハリウッドに呼び、サイレント映画での人気スターコンビ、ジャネット・ゲイナー（最初のアカデミー主演女優賞）とチャールズ・ファレルを主演にシンデレラストーリーのミュージカルを作る。

あらすじ
『若くて可愛らしい、モリー・カー（ジャネット・ゲイナー）とビー、二人は雑貨屋で働くルームメイト。ニューヨークのヨークヴィルに住み決して裕福とは言えない暮らしをしている。モリーは新聞の社交欄で見たロングアイランドに住む金持ちのプレイボーイであるジャック・クロムウェルとの恋を夢見る。(ツィターを爪弾きながら I'm A Dreamer, Aren't We All? を歌う)

当のジャックはフィアンセのジェインが彼女の取り巻きと付き合うのを好まず、自分も結婚に迷っている。頭を冷やすためにニューヨークにドライヴする。その日は、独立記念日の７月４日。モリーの町内ではパーティーが行われている。モリーは景気づけの歌を歌う。
(Sunny Side Up : 「太陽の当る面」を意味するsunny side は「物事の良い面」という意味合いもある。また sunny side up は「片面焼きの目玉焼」という意味があり、歌詞の最後の２行 Be like two fried eggs, keep your sunny side up! はしゃれになっている。1974年の学園ミュージカル Good News の再演にも歌われた。)

そこを通りかかったジャックは子供をよけようとモリーの隣人をはねてしまう。モリーは目の当たりにしたジャックに誤解から失望する。ジャックはモリーにロングアイランドの自宅のチャリティー・イヴェントで歌うように頼む。初めは断ったものの、モリーは金持ちの娘の振りを、ビーとボーイフレンド、隣人たちは給仕の振りをすることに了承する。彼の狙いはモリーと仲がよい振りをすることでジャックのフィアンセに嫉妬させることであった。

サザンプトンの大邸宅ではアマチュアのショーが行われている。エスキモーに扮した女性ダンサーたちがエロティックに腰を振る。徐々に熱くなり、氷が解け熱帯の島に変わり蒸気が噴き出しついには火事となる。いつしか水着となっていたダンサーたちは海に跳び込む。
(Turn On The Heat というという当時としてはかなり際どいダンスナンバーで映画ならではの技術を使った最初のミュージカル・シーンとなった)

フィアンセを嫉妬させる狙いは効を奏したものの、ジャックはモリーに惹かれるようになる。一方上流階級の生活を見たモリーは、カクテル（禁酒法時代にもかかわらず）、男に従属する女たち、誰が誰のものになったという類のゴシップなどの上流生活に失望し、金持ちの妻になる夢は消えてしまう。しかしジャックが彼らと異なる人種だと知るようになる。ジャックは恋心を打ち明け、モリーもそれにこたえる。(If I Had A Talking Picture Of You は当時目新し技術であった発声映画をテーマにしているが、この映画そのものをアピールするような歌でもある。1956年の映画 The Best Things In Life Are Free にも使われた。)

そして（その後紆余曲折の中だるみがあり）、ジャックはモリーの写真に向かって再び If I Had A Talking Picture Of You を歌い、そこにモリーが現れ、最後に二人は結ばれる。』


タイトルは Sunnyside Up とクレジットされることもある。この映画はサブタイトルを an original musical comedy としているが、同時期の他社のミュージカル映画とは異なったアプローチが成功したようだ（下記リスト参照）。映画としても、オープニングでの市民生活が見られるシーン、コメディ・レリーフとなる脇役が放つギャグなどすぐれたものだったらしい。ジャネット・ゲイナーは歌手としては素人の上に声も貧弱で、脚本にあったフルオーケストラをバックに歌うことは出来なかったが、最小限の伴奏で歌った I'm A Dreamer は逆に好結果を生み短期間ながらヒットもした。
映画も大きな興業収入をあげたが、以後２０年以上にもわたる フォックス・ミュージカルのパターンを作り上げたと言われる。つまり家庭的な女性を中心に置き仕事でも成功するが恋も成就するという、MGM、Paramount, Warner Brothers とも異なる形のミュージカルを。実際 フォックス・ミュージカルの主演は常に女性であり、その代表としてジャネット・ゲイナー、アリス・フェイ、ソニア・へニー、ベティ・グレイブル、マリリン・モンロー、そしてシャーリー・テンプルがあげられる。


1929年に公開された主要ミュージカル映画


作詞： Ｂ．Ｇ．デシルヴァ、ルー・ブラウン B.G. DeSylva, Lew Brown
作曲： レイ・ヘンダーソン Ray Henderson
映画 Sunny Side Up (1929) より Janet Gaynor, Charles Farrell が紹介



歌：


YouTube
■　ジャネット・ゲイナーの I'm a Dreamer 　：　映画 Sunny Side Up のクリップ
■　ジャネット・ゲイナーの Sunny Side Up 　：　同じく映画のクリップだが歌も踊りもうまいとは言えない
■　If I Had a Talking Picture of You 　：　同じく映画のクリップで二つのシーンの映像


2010/05/29 訳
2013/02/20 レイアウト変更等

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